リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「The Prognostic Significance of Peritumoral Lymphocytes’ Band-like Structure in Type II Endometrial Cancer」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

The Prognostic Significance of Peritumoral Lymphocytes’ Band-like Structure in Type II Endometrial Cancer

清水, 裕介 名古屋大学

2021.07.27

概要

【緒言】
子宮体癌は、本邦の欧米化とともに増加傾向が続いている。子宮体癌は臨床病理学的特徴から TypeⅠ・TypeⅡに大別される。TypeⅠ には比較的予後良好な類内膜癌(Grade1/Grade2)が分類され、TypeⅡは TypeⅠに比して少数ではあるものの類内膜癌(Grade3)および漿液性癌、明細胞癌のような予後不良組織型が分類される。進行・再発子宮体癌といった難治性症例に対する治療法は充分でない現状があり、新規治療法の探索・開発が望まれる。

腫瘍微小環境の特に免疫寛容機構が重要視され、免疫チェックポイント阻害療法の登場によってがん免疫療法は臨床の現場で用いられるようになったが、固形がんに対する単独療法での有効性は一部の症例にとどまる。今後がん免疫療法をより発展させるためには、同系薬剤自身の研究、バイオマーカー探索や適切な併用療法等に加えて、がん種ごとの宿主免疫応答等の基礎研究が重要である。

腫瘍組織には通常の臓器にはみられないような微小環境の特徴がある。そのひとつには腫瘍辺縁に形成される三次リンパ節構造 (Tertiary Lymphoid Structures, TLS)が挙げられる。TLS が確認される症例では予後が良好であることが複数のがん種で報告されてきており、乳癌や大腸癌の分野では予後との相関は認められている。しかし、そのメカニズムや他がん種についての詳細な報告は未だ少なく、これまで子宮体癌については言及されていない。

TLS は感染、腫瘍等による慢性炎症の周囲に、リンパ球の cluster として形成される。 Cluster 周囲には high endothelial venules (HEV) を認め、T 細胞、樹状細胞領域とその内部には胚中心 B 細胞、濾胞樹状細胞を認めて、二次リンパ組織に類似した構造をとる。また、TLS はエフェクター/メモリーT 細胞の活性化の場を提供するのみならず、ナイーブ T 細胞のプライミングの場として機能している可能性もあるが詳細は不明である。そのメカニズムの解析は、より効率的な免疫療法開発に繋がると考えられる。

これらを背景として、本研究では、TypeⅡ子宮体癌における TLS の有無を評価するとともに臨床病理学的意義を評価することを目的とした。

【対象および方法】
本研究では 2002 年 1 月 1 日から 2016 年 12 月 31 日までに名古屋大学医学部附属病院で手術治療を受けた TypeⅡ子宮体癌のうち、1/2 以上の子宮筋層浸潤がある症例を対象とした。臨床情報は、診療録から年齢、性別、検査所見、リスク因子、手術内容、併用治療内容、予後等について後方視的に抽出した。子宮体癌の筋層浸潤先進部~ 傍腫瘍領域を有するホルマリン固定パラフィン包埋ブロックを使用し hematoxylin-eosin 染色と各種免疫染色を行った。免疫染色された標本画像は、主に x200 のデジタルデータで保存し、RGB に分解後、Image J ((National Institutes of Health)を用いて染色陽性率の定量的評価を行った。腫瘍最深部の子宮筋層に腫瘍辺縁を帯状に集簇するリンパ球( 帯状リンパ組織様構造、TLB: peritumoral Lymphoid Bandlike Structures)を強拡大 (×200) あたりのリンパ球数によりそれぞれ 4 段階 (0-5:very low、6-100:low、101-200:intermediate、201-:high) に分類し評価した。Progression-free survival (PFS)および Overall survival (OS) のリスク因子はログランク検定を用いて評価した。

【結果】
対象期間のうち、100 症例が研究対象となったが手術検体もしくは臨床情報が不足した 7 名、および腫瘍が子宮漿膜まで及んだ 8 例を除外した 85 例を評価対象とした。

評価対象となった 85 例の背景は、病期分類(日産婦 2011、FIGO2008)StageI、II、 III、IV はそれぞれ 37 例 (43.5%) 、7 例 (8.2%) 、29 例 (34.1%) 、12 例 (14.1%) であった。組織型は類内膜癌 Grade3、漿液性癌、明細胞癌、混合癌がそれぞれ、58 例
(68.2%) 、13 例 (15.3%) 、9 例 (10.6%) 、5 例 (5.9%) であった。

原発巣の腫瘍浸潤の最深部を HE 染色標本で評価したが、他がん種で報告されているような TLS が確認できた症例は極一部(10 例)にとどまった。腫瘍最深部の子宮筋層には腫瘍辺縁に帯状に広がるリンパ球の集簇(帯状リンパ組織様構造、 PLB: Peritumoral Lymphoid Band-like structures)を認める症例が多く(59 例)確認された。

単変量解析において病期 (I, II vs III, IV) (HR=7.700; 95%CI=2.939-20.170; p<0.001)、CA125 値 (>35 IU/ml) (HR=2.579; 95%CI=1.255-5.299; p<0.001) 、術中腹水細胞診(negative vs. positive) (HR=3.779;95%CI=1.763-8.099; p<0.001)、PLB (very low, low vs. intermediate, high) (HR=0.198; 95%CI=2.58-11.46; p<0.001) はそれぞれ PFS の増悪と有意な相関を認めた。多変量解析においては病期 (I, II vs. III, IV) (HR=7.131; 95%CI=1.958-25.960; p=0.003) 、CA125 値(>35 U/ml) (HR=3.823; 95%CI=1.471-9.938; p=0.006)、組織型 (endometrioid carcinoma grade 3 vs. clear cell, serous, mix) (HR=2.986; 95%CI=1.313-6.787; p=0.009) 、 PLB (very low, low vs. intermediate, high) (HR=0.220; 95%CI=0.093-0.519; p<0.001) が PFS の独立した増悪因子であった。死亡のリスク因子は再発のそれと類似した結果であった。OS の増悪因子として、単変量解析において、病期 (I, II vs. III, IV) (HR=10.160,95%CI=2.330-44.310; p=0.002) 、 術中腹水細胞診(negative vs. positive) (HR=4.190; 95%CI=1.491-11.780; p=0.007)、脈管侵襲 (negative vs. positive) (HR=3.146; 95%CI=1.173-8.437; p=0.023)、PLB (very low, low vs. intermediate, high) (HR=0.207; 95%CI=0.0805-0.537; p=0.001) が強い相関を示した。多変量解析においては、年齢 (<60 vs. ≥60 years) (HR=3.484; 95%CI=1.094-11.090; p=0.037)、病期 (I, II vs. III,IV) (HR=6.250; 95%CI=1.061-37.00; p=0.043)、PLB (very low, low vs. intermediate, high) (HR=0.259;95%CI=0.0913-0.734; p=0.011) が OS と強い相関を示した。PLB の存在とその程度は PFS、OS ともに良好な予後と強い相関が示された。免疫染色において PLB の構造は、外周は CD4 が多く、次いで CD8、CD38、CD68 が存在し、中心部には CD20 が多いことが確認された。PLB の構造は TLS のそれと類似していることが確認された。また、蛍光免疫染色にて PLB では、CD4 が多くを占め、foxP3 および IL17 についても一部で確認されたが、IL27 は確認されなかった。また PNAd は腫瘍内に豊富に確認されたが、PLB 周囲には一部にのみ確認された。

【考察】
本報告では、予後不良とされる TypeⅡ子宮体癌において他の癌腫で報告される TLSとは違い特徴的な帯状構造の異所性リンパ組織が腫瘍辺縁に確認された。一方、比較的予後良好とされる TypeⅠ子宮体癌において PLB は多くの症例で認められなかった。また、PLB の存在とその密度は良好な PFS、OS と強い相関が確認された。このことから、TypeⅠ子宮体癌と TypeⅡ子宮体癌では PLB が形成されない原因は異なると推測される。また、他のがん種では報告されていない特徴的な帯状構造が形成される原因としては、妊娠期に子宮でみられる免疫応答のように臓器特異的な局所免疫が関与している可能性が考えられる。これら仮説を検証するためには、子宮における局所免疫応答や免疫寛容のさらなるメカニズム解明が必要である。

【結語】
TypeⅡ子宮体癌に、帯状構造の異所性リンパ組織 (PLB) が腫瘍辺縁に確認された。その構造は TLS と構成される免疫細胞が類似しており、TypeⅡ子宮体癌の良好な予後と関連していた。今後、子宮における PLB 誘導のメカニズムを解明することで、宿主側への適切な介入を行い腫瘍局所へ効率的にエフェクター細胞を浸潤・集積させうる免疫療法の開発に結び付く可能性がある。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る