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大学・研究所にある論文を検索できる 「日本産ナガコバチ科(ハチ目:コバチ上科)の分類学的再検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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日本産ナガコバチ科(ハチ目:コバチ上科)の分類学的再検討

河野, 太祐 KAWANO, Taisuke カワノ, タイスケ 九州大学

2022.03.23

概要

ナガコバチ科 Eupelmidae Walker, 1833 はコバチ上科 Chalcidoidea に属するハチ目の一群で、大部分の種はコバチ上科としてはやや大型の 5 mm 前後であり、雌は発達した中脚を用いて跳躍することが知られる。南極区を除く全世界から、現生の 3 亜科 45 属約 900 種のほか、バルト琥珀より 3 属 3 種の化石種が知られる。日本における本科の研究は、Ashmead (1904) が日本から 4 種を記録したものを端緒としているが、その後申請者らが研究を開始するまで 100 年以上、日本産種の分類学的研究はほとんど行われてこなかった。ナガコバチ科は全種がその幼虫のステージで捕食寄生を行うことが知られており、昆虫やクモ、時にはカニムシの卵、幼虫(幼体)、蛹のステージを寄主として利用する。国内外において土着天敵としての評価が行われており、国内では、クリタマバチ(行徳ら,1999)、ツヤアオカメムシ(松尾ら,2016)、マツカレハ(広瀬,1969)の土着天敵として注目されている。しかし、前述のように分類学的整理が進んでいなかったため、その同定の一部は不正確もしくは解像度の低いものであった。そこで本研究では、同定基盤の構築を目標とした日本産ナガコバチ科の分類学的検討を行った。研究材料は、自身で採集したサンプルの他に、国内の研究機関(北海道大学、名城大学、神奈川県立博物館、九州大学、自然環境研究センター)に収蔵された標本のほか、イギリス自然史博物館、チェコ自然史博物館、Alexandru Ioan Cuza University(ルーマニア)に所蔵されているタイプ標本および同定済み標本を基に、主に形態形質を用いて分類を行い、表面彫刻や構造、各部位の長さ、色彩を使用した。まず、Calosotinae 亜科を初めて日本から確認し、3 属を認めた。Balcha 属は 3 種、Calosota属は 10 種(うち 8 種が未記載種)、Eusandalum 属は 4 種(すべて未記載種)を見いだした。Balchareburra Gibson は、これまでマレーシア産 1 個体のみが知られていたが、今回、北海道から鹿児島県まで広く分布することが確認された。本州から鹿児島県までの個体の色彩は、ホロタイプとほぼ同じパターンを呈していたが、北海道産はかなり暗化する傾向にあった。Tanythorax 属は、これまでフィリピンとパプアニューギニア分布する T. spinosus Gibson のみが知られていたが、沖縄島より 1 未記載種を確認した。Neanastatinae 亜科については 2 属を確認し、Neanastatus 属は従来知られていた 2 種を含め3 種(うち 1 種は未記載種)のほか、日本未記録属の Metapelma 属の 3 種(1 種は日本新記録種、2 種は未記載種)を見出した。

最も種数の多かった Eupelminae 亜科については、9 属 55 種を確認した。Australoodera 属は3 種を認め(うち 2 種が未記載種)、Anastatus 属は従来知られていた 3 種を含め、7 種を確認した(うち 1 種が未記載種)。Brasema 属は大多数の種が新世界に分布するが、琉球から 1 種を見出した。この種は既知の同属他種、特に、これまでヨーロッパから知られていた旧世界唯一の種、B. kim(Nikolskaya)とは明確な形態差が見られたため、未記載種であると考えられた。Coryptilus 属はこれまでインド産の 1 種のみが知られていたが、ルーマニア、韓国の研究者と共同研究を行い、南~東南アジア産の C. circalatus Fusu、日本・韓国・台湾産のイシヅキナガコバチ C. longicervixKawano & Fusu を新たに記載した。Eupelmus 属は世界から 3 亜属が知られるが、そのすべての亜属を見出した。Eupelmus 亜属は近年 Gibson & Fusu (2016) により旧北区産の再検討が行われ、日本国内から 15 種が記録されたが、本研究ではこれらの種に加え、新たに 1 日本新記録種および2 未記載種を確認した。Macroneura 亜属はすでに記録があった1種のほか、3 未記載種を確認した。Episolindelia 亜属は 2 種群を見出した。australiensis 種群については、Park et al. (2017) が島根県竹島から記録した、E. (Episo.) australiensis (Girault) のみが知られていたが、同種を九州からも認めた。さらに、E. (Episo.) testaceiventris (Motschulsky)を新たに九州から確認した。これらのほかに、同亜属の hartigi 種群に属する 3 未記載種を確認した。Mesocomys 属はすでに記録のある 2 種の分布を再確認した。Merostenus 属は、Capreocauda 亜属の 8 未記載種、Merostenus亜属の 1 未記載種を確認した。Tineobius 属は 2 種を確認し、うち 1 種は未記載種であった。Zaischnopsis 属は 5 種(うち 3 種が未記載種)を確認した。

本研究の結果、18 日本新記録種および 41 未記載種を含む 1 亜科 10 属 57 種を日本から初めて確認し、日本産のナガコバチ科は 3 亜科 15 属 80 種となった。本研究では、そのうち十分に材料が集まった 28 種について詳細な記載を行った。また、これまで、ナガコバチの成虫越冬についての知見は知られていなかったが、特に南西日本の暖地において、複数の分類群で成虫が落葉下や常緑樹の葉裏で越冬することが明らかになった。

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