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大学・研究所にある論文を検索できる 「マグソコガネ亜科(甲虫目:コガネムシ科)における、好白蟻性群を主とした分類、系統および進化」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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マグソコガネ亜科(甲虫目:コガネムシ科)における、好白蟻性群を主とした分類、系統および進化

柿添, 翔太郎 KAKIZOE, Shotaro カキゾエ, ショウタロウ 九州大学

2020.09.25

概要

昆虫綱甲虫目は、既知の生物種数のうち、約1/4を占める種多様性に富んだ分類群である。非植食性の甲虫の種多様化機構に関しては十分に明らかとなっておらず、多様な食性戦略および微環境への柔軟性が多様化機構の仮説として指摘されている。そこで本研究では、種多様化機構を検証するための基礎研究として、非植食性であり、多様な食性および微環境への適応が見られる広義マグソコガネ亜科(甲虫目:コガネムシ科)を用いて研究を行った。

 広義マグソコガネ亜科は、狭義マグソコガネ亜科Aphodiinae Leach, 1815およびその近縁と考えられている亜科を含めた計6亜科9族389属3739種から構成される。南極区を除く全ての生物地理区に分布し、とりわけ旧北区とエチオピア区で種・属ともに多様化している。本亜科の多くは自由生活者であるが、Termitotroginae Wasmann, 1918, Corythoderini Schmidt, 1910, Termitoderini Tangelder & Krikken, 1982, Stereomerini Howden & Storey, 1992, Rhyparini Schmidt, 1910, Euparini Schmidt, 1910といった一部の分類群においては、シロアリとの共生生活を行う好白蟻性や、アリとの共生生活を行う好蟻性が知られている。しかし、これらの共生生活者はその生態的特性によって調査が困難であり、既知の標本数や研究事例が少なく、分類学的研究が立ち遅れていた。先行研究によって形態形質に基づき系統関係が推定されているが、共生生活に伴い収斂した形態を相同であると誤って評価している可能性が考えられた。また、系統関係が明らかになっていないことで、亜科および族といった高次分類体系は研究者間で混乱していた。そこで本研究では、国内および国外7カ国での野外調査と、国内および国外3カ国での標本調査を行い、主に共生生活者を対象とした分類学的研究と、広義マグソコガネ亜科に含まれるすべての亜科および族を対象とした分子系統樹の再構築を行った。また得られた系統関係および野外での観察記録、文献情報を用いることで、好蟻性・好白蟻性といった共生生活の進化に関して考察を行った。

 分類学的研究として、計2新属6種の記載および4属5種の再記載を行った。特に顕著なものとして、カンボジアおよびミャンマーにおける調査によって、それぞれ1種ずつ、Termitotrox属の未記載種を確認、記載した。カンボジアから見つかったT. venus Kakizoe & Maruyama, 2015は、Termitotrox属として初めてMacrotermes属のシロアリを寄主としていることが確認された。ミャンマーから見つかったT. icarusKakizoe, Liang, Myint, Maruyama, 20XXは、Termitotrox属として初めて、寄主シロアリに対して運搬共生を行っていることが明らかとなった。また、ケニアにおける調査によって、T. vanbruggeni Krikken, 2008を51年ぶりに再発見し、再記載した。東洋区とエチオピア区におけるTermitotrox属の形態的差異および後述の分子系統解析の結果に基づき、かつて東洋区の本属にあてられていたAphodiocopris属を復活させた。ミャンマーからは、Termitopisthestermiticola(Gestro, 1891)を132年ぶりに再発見し、寄主シロアリの記録とともに再記載を行った。ボルネオからはSybacodes属に近縁な新属新種を確認し、Megasybacodes brevitarsis Kakizoe, Maruyama & Masumoto, 2019として記載した。

 系統学的研究として、広義マグソコガネ亜科を構成する全6亜科9族と外群を含む100OTUを対象に、ミトコンドリアCOI領域(800bp)、16S領域(1040bp)および核28SDomain2領域(620bp)、28SDomain3–6領域(560bp)、18S領域(1880bp)の合計4, 900bp(トリム後4, 508bp)を元に最尤法およびベイズ法を用いて分子系統樹の再構築を行った。外群には、先行研究によってマグソコガネ亜科の姉妹群であると明らかになっているコガネムシ亜科Scarabaeinaeから3種を用いた。分子系統解析の結果、好白蟻性は少なくとも3回独立に進化したことが明らかとなった。具体的にはStereomerini系統で2回、Termitotroginae・Corythoderini・Termitoderiniからなる系統で1回であった。本研究によって、TermitotroginaeはCorythoderini、Termitoderiniの2族と単系統であることが明らかとなり、従来の亜科として扱う体系は、好白蟻性に伴う特殊化した形態を過大に評価していたと示唆された。またこの結果は、先行研究の形態に基づく系統関係とは異なっており、先行研究における形質状態の扱いに対する誤りを示唆した。本研究によって広義マグソコガネ亜科の系統関係が明らかになったことで、上述した好白蟻性群以外にも既存の分類体系の改訂を行う必要性が示唆された。具体的には、ツツマグソコガネ族Euparini、Odontolochini Stebnicka & Howden, 1996, マグソコガネ族Aphodiiniが多系統群であることが明らかとなった。

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