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Downregulated IRF8 in Monocytes and Macrophages of Patients with Systemic Sclerosis May Aggravate the Fibrotic Phenotype

乙竹 泰 横浜市立大学

2021.12.31

概要

【背景】
全身性強皮症(SSc)は皮膚をはじめとした全身の諸臓器の線維化,免疫異常,血管異常を三徴とした,難治性の免疫・膠原病疾患である.その病態は未だに解明されておらず,患者の遺伝的素因や環境因子が発症に関与することが示唆されている.SSc では,過剰な細胞外マトリクスを産生する線維芽細胞が組織の病的線維化に直接的に寄与するが,それ以外にも T 細胞や B 細胞などの免疫細胞,近年では単球やマクロファージ系細胞の病態への関与が注目されている. SSc 患者における末梢血単球の向線維化フェノタイプ異常(Higashi-Kuwata, et al. 2010),組織におけるM2 型マクロファージ偏移,末梢血単球由来血管内皮細胞様細胞のフェノタイプ異常(Yamaguchi, et al. 2010)などは,単球・マクロファージの形質異常が SSc 病態において重要な働きを担っている可能性を示唆するが,その調節機構は明らかになっていない.
インターフェロン制御因子 8(IRF8)は IRF ファミリーに属する 50kDa の転写因子で,主に血球細胞において産生される.当初は 1 型インターフェロンの制御因子として発見されたが(Driggers, et al. 1990),現在では単球,マクロファージ系細胞の分化・機能において重要な役割を果たす転写因子であることが知られている(Kurotaki D, et al. 2014).近年, SSc においては複数の Genome wide association study (GWAS)においてIRF8 との関連が報告されているが(Gorlova, et al. 2011; Terao, et al. 2013),その病態における IRF8 の働きは未だわかっていない.今回我々は SSc の病態における単球,マクロファージ系細胞の異常にIRF8 発現異常が関与している可能性を考えた.

【目的】
単球,マクロファージにおける IRF8 発現異常が SSc の線維化病態に及ぼす影響を検討する.

【方法】
まず SSc 患者の末梢血単核細胞(PBMC)および単球における IRF8 の mRNA,タンパク発現をPCR 法,免疫ブロット法でそれぞれ測定した.さらに,皮膚硬化の重症度と IRF8発現との関連について解析を行った.
次に,単球におけるIRF8 発現異常が単球・マクロファージの機能,マクロファージへの分化に及ぼす影響を検討するため,RNA 干渉法を用いて IRF8 をノックダウンした単球を作成した.さらに,IRF8 ノックダウン単球をマクロファージへと分化誘導した.IRF8 ノックダウン単球・マクロファージにおいて線維化病態に関与するサイトカインの mRNA,タンパク発現について,PCR 法,beads-based immune assay 法を用いて解析を行った.また,フローサイトメトリを用いて,IRF8 ノックダウン単球由来マクロファージの表面マーカーを解析し,M1/M2 分化について検討を行った.
さらに,Cre/loxP システムを用いて骨髄球特異的 IRF8 コンディショナルノックアウトマウスを作成し,単球・マクロファージの機能や皮膚における線維化について検討を行った.また,このマウスを用いてブレオマイシンによる皮膚線維化モデルマウスを作成し,皮膚における線維化にかかわるサイトカイン発現について PCR 法で,皮膚線維化については HE染色やヒドロキシプロリンアッセイによって評価を行った.

【結果】
SSc 患者と健常者の間で,PBMC,単球における IRF8 発現に有意差はなかった.一方, SSc 患者をびまん皮膚硬化型と限局皮膚硬化型に分けて解析を行うと,より重症型であるびまん皮膚硬化型 SSc 患者において健常者と比して有意な IRF8 発現低下を認めた.さらに,IRF8 発現と皮膚線維化の重症度との間に負の相関を認めた.
IRF8 をノックダウンした単球,および,その単球由来マクロファージにおいては線維化にかかわるサイトカインの発現上昇を認めた.また,局所への単球,マクロファージの遊走を促す MCP-1 の発現上昇もみられた.IRF8 をノックダウンした単球由来マクロファージにおいてはM2 優位な分化誘導がみられた.さらに,IRF8 ノックダウン単球においては M2分化を促す転写因子の発現が亢進していた.
骨髄球特異的IRF8 コンディショナルノックアウトマウスにおいて,皮膚における過剰な線維化は明らかではなかったが,mRNA レベルでは皮膚における Type I コラーゲンの発現上昇が認められた.このコンディショナルノックアウトを用いてブレオマイシンによる皮膚線維化モデルを作成すると,有意な皮膚線維化を認め,線維化関連因子の発現上昇を認めた.また,皮膚に浸潤するマクロファージの増加を伴った.

【考察】
びまん皮膚硬化型 SSc 患者の単球において IRF8 発現が低下しており,皮膚線維化の重症度との間にも相関を認めた.In vitro の実験においては,IRF8 をノックダウンした単球は M2 優位にマクロファージへ分化し,骨髄球特異的 IRF8 ノックアウトマウスを用いた in vivo の実験においても皮膚に浸潤するマクロファージは M2 優位に分化し、さらにブレオマイシンによる皮膚線維化が有意に亢進した.
これらにより、SSc 患者において皮膚の線維化が起こる機序として、①IRF8 が低下した単球が皮膚に浸潤する、②皮膚に浸潤した単球が MCP1 を産生しさらに血中からの単球の遊走を促進する、③皮膚においてこれらの単球が M2 優位にマクロファージへと分化する、④M2 マクロファージが線維化促進因子を産生し線維芽細胞を活性化する、⑤線維芽細胞や一部のマクロファージが筋線維芽細胞に分化し細胞外基質を過剰に産生する、といったことが考えられた。一方で、骨髄球特異的 IRF8 コンディショナルノックアウトマウスにおいては線維化が自然発症しなかったものの、BLM 投与による線維化誘導は有意に亢進していた。SSc の発症には遺伝的要因、環境的要因双方が関与すると考えられており、IRF8 低下に加えて何らかの環境要因が必要である可能性も考えられた。
今回の研究により、単球、マクロファージにおける IRF8 発現が SSc の線維化病態において重要な役割を果たしていると考えられ、IRF8 が SSc の治療ターゲットの一つとなる可能性が示された。IRF8 の発現低下には過剰なメチル化が関与していることが報告されており、脱メチル化剤等による IRF8 の発現回復が SSc の新規治療へとつながっていくことが期待される。

【結論】
びまん皮膚硬化型 SSc 患者において,単球における IRF8 発現が低下しており,これにより M2 優位なマクロファージ誘導が起こり線維化亢進に寄与することが示唆された.

この論文で使われている画像

参考文献

Ototake Y, Yamaguchi Y, Kanaoka M, Akita A, Ikeda N, Aihara M. Varied responses to and efficacies of hydroxychloroquine treatment according to cutaneous lupus erythematosus subtypes in Japanese patients. J Dermatol 2019;46:285-9

Ikeda N, Yamaguchi Y, Kanaoka M, Ototake Y, Akita A, Watanabe T, Aihara M, Clinical significance of serum levels of anti-transcriptional intermediary factor 1-γ antibody in patients with dermatomyositis. J Dermatol 2020;47:490-6

Kanaoka M, Yamaguchi Y, Watanabe T, Akita A, Ototake Y, Ikeda N, Aihara M, Clinically amyopathic dermatomyositis with anti-transcriptional intermediary factor 1-γ autoantibody positivity. Rheumatology (Oxford) 2020;59:e68-9

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