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大学・研究所にある論文を検索できる 「Dynamic changes in the phenotype of dendritic cells in the uterus and uterine draining lymph nodes after coitus」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Dynamic changes in the phenotype of dendritic cells in the uterus and uterine draining lymph nodes after coitus

安田 一平 富山大学

2020.09.28

概要

〔目的〕
生殖補助医療による出生が増加している中で、胚移植当たりの妊娠率は大きく変化していない。そのため、原因不明の着床不全の病態解明や治療法の開発が求められている。ヒト妊娠において、胎児は母体にとって半異物であるため、妊娠中の母児間免疫寛容の誘導が必須である。子宮樹状細胞(uterine dendritic cells; uDCs)は、その免疫寛容誘導に関与するため着床成立と胎盤形成に不可欠な細胞である。uDCsはT細胞へ父親抗原を提示し、母児間免疫寛容に寄与するが、とりわけtolerogenic dendritic cells (tDCs)は免疫寛容の中心的役割を果たす制御性T細胞(regulatory T cells; Tregs)を誘導する。また、妊娠子宮のtDCsは未成熟( 以後immature stateと表記) と考えられているが、性交後の刺激や精液成分中の炎症性物質による子宮内炎症後に、どのようにimmature DCsが誘導されるかは不明であった。そのため、我々は性交後から着床前までのtDCsを含む樹状細胞の誘導・変動を明らかにすることで、新たな着床不全の治療標的を発見するべく研究を行った。

〔方法並びに成績〕
C57BL/6雌マウスとBALB/c雄マウスの異系交配で、plugを確認した日をday0.5とし、day0.5(性交後)、1.5、2.5、3.5(着床前)の子宮内リンパ球をフローサイトメトリー(FCM)で解析した。性周期がestrous(性交時の性周期)であるマウスを非妊娠マウス(Virgin)として用いた。子宮のPI–C D45+Gr-1–F4/80–CD11c+DCsの各サブセットをCD103–DCs、CD103+DCs、PDCA-1+Ly6C+CD11b–-p lasmacytoid DCs(pDCs)の3群に分けた。さらに、各サブセットをCD86とMHC class IIの発現により、CD86dimMHC class IIdim-immature DCs とCD86highMHC class IIhigh-mature DCsに分けた。 Virginに比べて、CD11c+DCsは、day0.5(8.7倍)・1.5(4.0倍)に増加し、day2.5(1.5倍)までに減少し、day3.5(5.0倍)に再び増加した。Mature CD11c+DCsは、day0.5(60.6%)・1.5(55.5%)に増加し、その後はVirgin(27.8%)と同等までに減少した。一方で、immature CD11c+DCsは対照的にday0.5(19. 7%)・1.5(22.5%)と減少し、その後はVirgin(44.5%)と同等までに増加した。子宮のDCsの80%はC D103–DCsで、21.4%がmature phenotypeであった。maturationの変動はCD11c+DCsと同様であった。次いで多かったのが、CD103+DCsで子宮のDCsの10%であった。CD103+DCsは、Virginにおいて、80.6%がmature phenotypeであったが、日齢経過とともに減少し、day3.5には有意にimmature CD103+DCsの増加(49.3%)を認めた。pDCsは日齢経過を通じて少数で、immature phenotypeに変化を認めなかった。これらの結果から、day0.5では性交後の炎症により、子宮のDCsのmaturatio nと増加が引き起こされ、day3.5では、子宮のimmature DCsの増加が母児間免疫寛容に関わることが示唆された。
次に、C57BL/6雌マウスとC57BL/6雄マウスの同系交配で、day1.5・3.5における異系交配との子宮のDCsについて比較した。Day1.5で、異系交配と同系交配ともに子宮のmature DCsの増加を認めた。これは、異物である胎児(異系)と異物と認識されない胎児(同系)で同様の反応であることから、性交刺激あるいは精液成分により誘導されることが示唆された。一方で、day3.5では、異系交配にのみimmature DCsの増加を認めたことから、異物である胎児の持つ父親抗原への免疫寛容誘導が、妊娠維持に必要であることが示唆された。
次に、uDCsの誘導が起こる場所を同定することを目的に、DCsの入れ替わりと所属 リンパ節(draining lymph nodes; dLNs)への移動を評価した。評価には、光変換蛍光タンパクKikume Green-Red(KikGR)を発現したマウスを用いた。KikGRは緑色に自然発光する蛍光タンパクで、紫色光(405nm)を照射することで、赤色へ変換し、臓器特異的な細胞の入れ替わりと遠隔臓器への細胞移動評価を可能とする。全身の細胞にKikGRを発現したC57BL/6雌マウスと野生型のBALB/c雄マウスを異系交配し、day0.5・1.5・2.5の子宮に光照射し、各24時間後にFCM解析を行った。Virginやday1.5ではuDCsの割合は、子宮に留まり続けたDCs(remaining DCs: rDCs)と新しく子宮内に移入してきたDCs(immigrati ng DCs: iDCs)は、同等の割合であった。一方で、day3.5には、uDCsは主にimmigrating DCs(70%)で構成されていた。また、iDCsはmature DCs(50%)が優位ではあるがimmature DCs(20%)も認めていたのに対して、rDCsはほぼmature DCs(95%)であった。これらの 結果から、着床前に増加するimmature DCsはiDCsに由来することが示唆された。
最後に、免疫系に抑制性に働くことで免疫寛容に関わるPD-L2の発現について検討した。Virginでは、PD-L2の発現を認めなかったのに対して、day3.5では、immature CD10 3+DCs(11.4%)やimmature CD103–DCs(4.5%)のimmature DCsでPD-L2発現が低率であったのに対し、mature CD103+DCs(40.0%)やmature CD103–DCs(27.3%)のmature DCsでは有意にPD-L2の発現が増強していた。また、day3.5の子宮のrDCsとiDCsではPD-L2の発現は同等であったが、d LNsにおけるuDCs(86.8%)には有意なPD-L2発現を認めた。これらの結果から、着床前子宮におけるmature DCs上のPD-L2の発現が母子間免疫寛容の誘導に関与している可能性が示唆された。

〔総括〕
着床前子宮において、day0.5(性交後)にmature DCsの増加を、day3.5(着床前)にimmature DCsの増加といったダイナミックな日齢変化を認めた。異系交配と同系交配での比較では、day 3.5において異系交配でimmature DCsの増加を認めたことから、父親抗原特異的な変化があることが示唆された。また、今回我々はKikGRマウスを用いて、初めてマウスの妊娠子宮における細胞の入れ替わりについて報告した。Day3.5の子宮におけるimmature DCsの増加は、子宮外から流入してくるDCsの増加に由来するものであった。また、これまで母児間免疫寛容にはimmat ure DCsの増加が関わることが考えられていたが、今回、我々はmature DCsの中にも免疫寛容に関わるPD-L2を発現するphenotypeがいることを示した。着床前子宮における免疫系動態の解明が着床不全の新しい治療標的につながる可能性が示唆された。

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