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大学・研究所にある論文を検索できる 「The Myh7 Q315R variant causes left ventricular noncompaction with altered myocardial metabolism」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The Myh7 Q315R variant causes left ventricular noncompaction with altered myocardial metabolism

寶田 真也 富山大学

2022.03.23

概要

〔目的〕
左心緻密化障害(LVNC)は、心内膜の肉柱形成と薄い圧縮層を特徴とする遺伝性の心筋症であり、MYH7遺伝子バリアントはLVNCの主要な原因である。しかし、MYH7バリアントとLVNCの表現型との関係は不明であり、LVNCにおける心筋の代謝変化を評価した報告も少ない。本研究では、ヒトで確認されたMyh7バリアントを持つ遺伝子改変マウスにおける表現型を調べ、このバリアントが心機能障害や心筋の代謝にどのような影響を与えるかを評価した。

〔方法並びに成績〕
CRISPR-Cas9技術を用いてMyh7Q315Rのヘテロ接合マウス(Myh7Q315R/+)を作成し、さらにそれらの交配からホモ接合マウス(Myh7Q315R/Q315R)を得た。10週齢のマウスを若年成人モデルとして使用した。心機能の評価には動物用の超音波機械を使用し、既存の方法に従って吸入麻酔下で行った。さらに、組織学的評価のため、心尖部切片から組織標本を作製した。その結果、心臓超音波による測定ではMyh7Q315R/Q315Rマウスでは野生型と比較して、心収縮力が低下し、左心室容積が増大していた。さらに、組織学的所見を野生型と比較した結果、Myh7Q315R/+マウス、Myh7Q315R/Q315Rマウスは左室前壁、側壁、後壁にかけて肉柱形成を認め、非緻密下層と緻密下層の比(NC/C比)が増大した。これは人における臨床的なLVNCの心臓内膜形態と類似していた。これらの結果から、Myh7Q315Rバリアントマウスは拡張型心筋症タイプのLVNCに類似した表現型を呈することが示された。

さらに、Myh7Q315Rバリアントマウスの左室心筋における遺伝子発現の変化を評価するために、マウスの左室心筋組織からRNAを抽出し、マイクロアレイによるMyh7Q315Rバリアントマウスと野生型とのRNA発現量の比較を行った。その結果、Myh7Q315R/+マウスとMyh7Q315R/Q315Rマウスにおいて12個の遺伝子が野生型と比較して共通の発現変化を認めた。それらの遺伝子に対して、real-timepolymerasechainreaction(PCR)による野生型との比較を行った。その結果、心不全のマーカーであるNppaはMyh7Q315R/+マウスとMyh7Q315R/Q315Rマウスの両方で、野生型に比べて発現が増加していた。心筋梗塞後の虚血再灌流障害で発現するCd38はMyh7Q315R/Q315Rマウスで野生型に比べて発現が増加していた。また、心筋虚血後の心筋リモデリングの際に発現するPostnはMyh7Q315R/+マウスでは野生型マウスに比べて発現が増加していた。これらの結果は、Myh7Q315Rバリアントマウスの心筋が細胞障害性ストレスにさらされていることを示していた。

細胞障害性ストレスに対して、Myh7Q315Rバリアントマウスの心筋でどのような代謝変化が起きているのか、液体クロマトグラフィー質量分析法とガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて代謝物の相対量を測定した。その結果、解糖系はMyh7Q315R/Q315Rマウスでは野生型に対して中間代謝物が低く、抑制されていた。さらに解糖系の下流に位置するペントースリン酸経路、核酸合成経路に関しても抑制的な影響がMyh7Q315Rバリアントマウスで確認された。一部のTCA回路中間代謝物はMyh7Q315Rバリアントマウスでは野生型に対して増加しており、それらはアミノ酸分解の亢進によって産生されていることが分かった。

〔総括〕
私は、MYH7遺伝子のヒト変異体を持つマウスが、拡張型心筋症タイプのLVNCに類似した表現型を呈することを初めて示した。このMyh7遺伝子の変化は細胞障害性ストレスを反映して、心収縮力を低下させ、左心室容積を増加させた。メタボローム解析の結果、Myh7Q315R変異体を持つマウスでは、解糖系によるエネルギー産生が抑制され、アミノ酸分解が促進されることがわかった。本研究で示された基質代謝物の変化は、LVNCの病態に新たな知見を与えるものであり、LVNCの代謝メカニズムをさらに解明することで、新たな治療法の提供が期待される。

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