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今年で11回目の開催となった数学甲子園(全国数学選手権大会)。昨年に引き続き9月16日(日)に都内で行なわれた本選の模様をレポートします! 全国の中・高・高専生による熱い戦いの結末は……?
また、記事の最後では本選で出題された問題を一部ご紹介。ぜひ、みなさんもチャレンジしてみてください!
<2017年 本選レポートはこちら>
【解答速報あり】数学甲子園2017 本選レポート。今年の難易度は!?
数学甲子園は、全国の中学・高校・高専生が団体戦で数学の力を競う大会。数学の問題を解く力だけではなく、「問題解決力」「チームワーク力」「創作力」「プレゼンテーション力」など幅広い力が問われます。610チーム2,425人が大会に参加し、予選を勝ち抜いた36チームが本選に進出しました!
■本選進出チーム一覧
ついに本選がスタート!
司会進行を努めたのは、毎年おなじみのお二人! 数学科出身のフリーアナウンサー・篠崎菜穂子さんと、こちらも数学科出身の落語家・林家久蔵さんです。
開会式では前回の優勝チーム『バンジー改』チーム(兵庫県・灘高等学校)のリーダーの黒田さんから数鷲旗(優勝旗)の返還が行なわれました。ちなみに、『バンジー改』チームは今年も『棒々鶏(バンバンジー)』チームとして本選に進出。2年連続の優勝を目指します。
そして、京都府・洛南高等学校の『くろろめたん』チームのリーダー、渡部さんによる選手宣誓によって本選がスタート! 力強くも爽やかな宣誓が会場に響きました。
今年の栄冠はいったいどのチームに……!? 数学の熱い戦いが始まります!
チームワークがものを言う! 今年もハイレベルだった“Math Battle”
最初に行われた競技は、“Math Battle”。実用数学技能検定(数学検定)準1級~準2級レベルの問題18問を、チームで協力して解いていきます。18問中6問は英語表記問題とかなりハイレベル。60分間という短い時間で取り組むため、誰がどの問題を担当するかなど、役割分担も重要になってきます。
Math Battleを終えた選手たちからは「チームで分担して頑張ったけれど、ちょっと厳しかったです」「疲れました……(笑)。予選も難しかったですが、本選はもっときつかった。自信は半分くらいです」などの声が挙がりました。2017年に引き続き、今年もなかなか難易度が高めの問題だったようです。
今年も数学ずくめのエンターテインメントが目白押し!
Math Battleのあとは、シンガーソングライターの式 紗彩(しき さあや)さんによるミニライブ!
「君にしか導けない方程式」を披露してくれました。大学院で数学を専攻されていた式さんならではの歌詞が曲全体にちりばめられていて、数学ゴコロをくすぐります。透き通るような歌声が、疲れた頭を癒やしてくれるようでした。気になる方はぜひ一度聴いてみてください。
続いて、ジャグリングの世界大会で日本人初のファイナリストになった経験を持つ“宙(かなた)”さんこと、東京電機大学理工学部准教授の松浦昭洋先生によるショータイム!ジャグリングのボールの動きなどを数理的に説明しながら、不思議なパフォーマンスを見せてくださいました。
自分たちで作成した問題をプレゼンテーションする“Math Live”
午後からは、ついに大会の最終競技“Math Live”が行なわれます。事前に行なわれた問題作成“Math Create”と、先ほどの“Math Battle”の合計得点に基づいて、6チームが“Math Live”に進出できます。
■Math Live進出チーム
・広島大学附属高等学校『ラビット球児』チーム(広島県)
・滝高等学校『ケアレ・スミス』チーム(愛知県)
・栄光学園高等学校『数学界のTourist』チーム(神奈川県)
・愛知県立明和高等学校『明和A』チーム(愛知県)
・灘高等学校『棒々鶏』チーム(兵庫県)
・桐蔭学園中等教育学校『せんちゃんず』チーム(神奈川県)
Math Liveでは、Math Createで作成した問題についてプレゼンテーションと質疑応答を行います。
今回の作問テーマは“分ける”。「正方形を一回折ったときに5個の領域に分けられる確率」「長さ22×22の正方形のマスを、1×22、2×11の長方形に分割する方法は何通りあるか」「2本に切り分けたひもを使って平面図形を作ったとき、面積の和が最小値になるようなひもの長さ」など、テーマに沿って発想を膨らませた完成度の高い問題が続々と発表されました。
役割をきっちりと分担してメンバー一人ひとりが順番に説明したり、リーダーが代表して説明したあと、質疑応答では得意分野や担当領域に合わせてそれぞれのメンバーが回答したり……発表の仕方にも、それぞれのチームのカラーや作戦が現れていました。
質疑応答でも、ハイレベルな質問が飛び交いました。質問した側も、プレゼンをする側も、互いに問題への理解が深まり、さらなる応用問題へと広がる可能性を見出すことができました!
そして、質疑応答で優れた質問をして評価された
・開成高等学校『開成高1S』チーム(東京都)
が、敗者復活枠でMath Liveでプレゼンを実施。
(質問にも投票が行なわれ、選ばれたチームが敗者復活枠でMath Liveに参加できます)
これで本選の競技はすべて終了! みなさんおつかれさまでした!!
結果発表! 今年の優勝チームは……?
今大会の入賞チームは以下の通り。おめでとうございます!
■特別賞「林家久蔵賞」(ユーモアとインパクトがあったチームに贈られます)
西大和学園『しゅらば』チーム(奈良県)
高校1年生で初めての出場。会場でプレゼントされた数学甲子園のタオルを頭に巻いて、「とにかく初めての本選を楽しもう!」という思いが現れた結果の受賞でした。
■特別賞「日本公認会計士協会賞」(会計士に必要なチームワークや推察力が評価されたチームに贈られます)
甲陽学院高等学校『チームgauss』(兵庫県)
Math Battleでのチームワークや、Math Liveでの鋭い質問などが評価されての受賞。おめでとうございます!
■7位
開成高等学校『開成高1S』チーム(東京都)
総合評価 234点(Math Create:80点 Math Battle:110点 Math Live:44点)
敗者復活枠から見事入賞です!
■6位
滝高等学校『ケアレ・スミス』チーム(愛知県)
総合評価 234点(Math Create:128点 Math Battle:50点 Math Live:56点)
※合計得点が等しい場合はMath Liveの得点で順位を判定
Math Createの得点がトップ、Math Liveの得点がトップタイでした!
(左:『開成高1S』チーム、右:『ケアレ・スミス』チーム)
■5位
桐蔭学園中等教育学校『せんちゃんず』チーム(神奈川県)
総合評価 245点(Math Create:105点 Math Battle:130点 Math Live:10点)
Math Battleがトップタイの高得点でした!
■4位
広島大学附属高等学校『ラビット球児』チーム(広島県)
総合評価 247点(Math Create:108点 Math Battle:100点 Math Live:39点)
初出場で見事入賞! 次はさらなる上位を目指して頑張ってください!
(左:『ラビット球児』チーム、右:『せんちゃんず』チーム)
■敢闘賞(3位)
愛知県立明和高等学校『明和A』チーム(愛知県)
総合評価 254点(Math Create:113点 Math Battle:110点 Math Live:31点)
リーダーのコメント
「去年は予選を突破できても本選で勝ち進めなかったのですが、今年は3年生で、最後の年に敢闘賞をもらえてうれしいです、ありがとうございます!」
■準優勝
灘高等学校『棒棒鶏』チーム(兵庫県)
総合評価 259点(Math Create:73点 Math Battle:130点 Math Live:56点)
昨年優勝チームは惜しくも2位でした……!
リーダーのコメント
「個人的には、去年優勝したのもあって……正直2位で悔しいです。でも、2年連続でいい結果を、いい機会をいただけて、日本数学検定協会に感謝です。ありがとうございました」
■優勝
栄光学園高等学校『数学界のTourist』チーム(神奈川県)
総合評価 274点(Math Create:110点 Math Battle:120点 Math Live:44点)
3種目ともにバランスよく高得点を獲得した、『数学界のTourist』チームが優勝! 全員が高校2年生のチームです。おめでとうございます!
リーダーのコメント
「2年前に栄光学園高等学校が準優勝したとき、その先輩たちを超えたいと思いました。その思いがかない、優勝できたことはとても光栄です」
ここからは、『数学界のTourist』チームのインタビューをお届けします!
写真右から、永野さん(リーダー)、兼下さん、丹羽さん、野田さん
改めて、優勝した感想を聞かせてください!
野田さん:正直優勝できると思っていなかったので、感想とか何も考えられていないです……(笑)まあでも、やっぱりリーダーのおかげだと思っています。
丹羽さん:こういう大きな大会でメダルをかけてもらうのは初めてだったので、とてもうれしいです。
兼下さん:予選がぜんぜんだめで、ギリギリで通ったかなという感じでした。本選はみんな強くてレベルが高いと思ったので、そのなかで優勝できるなんて正直思っていませんでした。それでもみんなで力をあわせて優勝できて、うれしさっていうよりも驚きがすごいです。
永野さん:今、軽やかに飛んでいきたいくらいの気持ちなのですが、メダルはとても重いです。これまで、数学オリンピックや科学の甲子園でメダルをいただいたことがあるのですが、自分がリーダーとして金メダルをかけていることを考えると、より一層重さを感じるような気がします。
勝因はなんだと思いますか?
野田さん:Math Battleで英語の問題が6問あるのですが、英語が得意な丹羽がいたので、そこでアドバンテージが出たのではと思っています。
丹羽さん:数学の問題文に使われる英語には独特な表現がいっぱいあるので、ちょっと不安もありましたが、大きなミスをしなくてよかったです。
兼下さん:点数の内訳を見たら、結構バランスよくとれていて。Math CreateとMath Liveはとくにリーダーの力が大きかったと思っています。リーダーは本当に数学に関して次元が違うというか……僕は数学オリンピックで中3のときに銅賞をとったのですが、その一年前にとったのはリーダーでした。
永野さん:そんなふうに言ってくれていますが、Math CreateでもMath Battleでも、Math Liveでも、全部私一人では至らないところばかりでした。Math Battleでは、英語が得意な彼(丹羽さん)が英語の問題をやってくれたり、この二人(野田さんと兼下さん)が私のミスを指摘して、サポートしてくれたり。何もかも助けられました。
出場のきっかけは、2年前に先輩が準優勝していたことだったのですよね。
永野さん:2年前に優勝したチームの一人が、私が学校で所属している「数学班」の3学年先輩でした。本当に数学がよくできる人だったんです。ずっと憧れの存在でした。その先輩が数学甲子園で準優勝したというニュースを学校内のビラで知って、すごいなと思いながらも、「自分こそは1位をとりたい」と思いました。
去年は出場されたのですか?
永野さん:去年は……なかなかチーム名が定まらず……
兼下さん:もたもたしていたら、出場を逃してしまいました(笑)。
永野さん:でも、逆に時間が空いたことで優秀なメンバーを集められたのでよかったと思います。じつは、今日ここに来られなかった竹中というもう一人のメンバーがいて、今回のチームは彼が一緒に作ってくれたんです。彼は国際物理オリンピックの代表選考に行っていて、今日は来られませんでした。その彼と一緒にあと三人集めようということで声をかけたところ、兼下と丹羽と野田が加わってくれました。来年は、竹中も一緒に本選に出たいですね。
みなさん、将来に向けて数学をどんなふうに活かしていきたいと思っていますか?
永野さん:私は正直なところ、数学を趣味や興味で追い求めてきた人間なので、なにかに活かそうという気持ちはこのメンバーのなかで一番薄いのではないでしょうか(笑)。この短い16年の人生で何を言ってるんだと思われるかもしれませんが、数学を追い求めた日々を送ってきたので、これからも追い求め続けたいです。
兼下さん:僕は小学校2年生のころから算数の大会などに出てきました。そこで永野のようなすごい能力を持つ人たちを見てきて、僕は自分が目立つようなことではなくても、人に数学を伝えていけるような、先生などの仕事ができたらいいなと思っています。
丹羽さん:僕も数学を続けたいという思いはありますが、脳神経の解析などに数学を活かしていくことに興味を持っているところです。
野田さん:僕は、物理や化学に興味があります。もちろん数学を使いますし、数学が発展すれば科学もいろいろと進歩していくと思うので、これからも数学を頑張っていきたいです。
改めて、『数学界のTourist』チームのみなさん、優勝おめでとうございます! リーダーの存在を軸に、メンバーそれぞれの得意分野を活かして適材適所で実力を発揮するチーム力と、信頼関係が印象的でした。来年も優勝目指して頑張ってください!
今年も、熱い数学バトルが繰り広げられた数学甲子園。来年の大会も楽しみにしています!
あなたは解ける? 数学甲子園2018出題問題(一部)
ここからは、数学甲子園2018の”Math Battle”で実際に出題された問題と模範解答を一部ご紹介します。ぜひ挑戦してみてください(問題はクリックorタップで拡大表示できます)。
問題1.
問題1の模範解答はコチラ
問題5.
問題5の模範解答はコチラ
問題11.
問題11の模範解答はコチラ
問題18.
問題18の模範解答はコチラ
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