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DNAクローニング(4/4)大腸菌の形質転換およびクローンのスクリーニング | リケラボ

大腸菌の形質転換およびクローンのスクリーニング

リケラボ実験レシピシリーズ DNAクローニング(4/4)

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4回にわたってお届けしているDNAクローニングのテクニック、最終回です。

この記事は、理系研究職の方のキャリア支援を行うパーソルテンプスタッフ研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)がお届けする、実験ノウハウシリーズです。
過去記事はコチラ。実験レシピ DNAクローニングを始めるために

大腸菌の形質転換およびクローンのスクリーニング

ライゲーション反応を終えたDNA溶液の中には、インサートがベクターに適切に連結された「当たり」のプラスミドの他に、副生成物など「はずれ」のDNA分子も多く存在します。

このステップでは、この「当たり」と「はずれ」の混合液中のDNAを大腸菌に取り込ませ、得られる大腸菌クローンの選択と培養を通して、「当たり」のプラスミドを持った大腸菌クローンを選別します。

プラスミドを細胞内に取り込んだ大腸菌は、プラスミド由来の遺伝形質を新たに発現します(大腸菌の形質転換/トランスフォーメーション)。大腸菌の形質転換を成功させて、「当たり」のプラスミドを高効率で得るために、操作の手順とポイントを概説していきましょう。

事前準備

・ コンピテントセル:形質転換受容性の大腸菌 (DH5α株など)、-80度で保管する。
・ LB液体培地 (必要量をあらかじめ分注して、37度で保温しておく。抗生剤を添加しない。)
・ LBプレート培地(アンピシリンなどプラスミドに対応した抗生剤を至適濃度で添加したもの)
・ 1.5 mLマイクロチューブ
・ 恒温機(42度に設定)
・ 恒温機(37度に設定)
・ スプレッダー

実験手順

  1. 凍結保管しておいたコンピテントセル菌液を氷上で溶かす。
  2. 混濁が一様になるように菌液を混和し*1、1サンプルあたり50~100 μLずつマイクロチューブに分注して、氷上に置く。
  3. 形質転換に用いるDNA溶液(ライゲーション産物など)を、分注した菌液に加えて混和する。*2
  4. 菌液とDNA溶液の混合液を氷上で30分間インキュベートする。
  5. 菌液とDNA溶液の混合液を42度の恒温機で1分間インキュベートする(加熱/ヒートショック処理)。*3
  6. すぐに氷上に移し、2分間冷やす。
  7. 37度に保温しておいたLB液体培地を、菌液の9倍量(450~900 μL)を目安として、それぞれの混合液に加える。*4
  8. 37度の恒温機に移して、1時間程度培養する。
  9. 必要な枚数のLBプレートを用意する。通常は、培養菌液の約10%当量を1枚のプレート上に播く。*5
  10. スプレッダーを用いて、培養菌液をプレート全面に塗り広げる。
  11. プレートを37度の恒温機に入れ、12~18時間程度インキュベートする(選択培養)。
  12. それぞれのプレートについて、孤立したコロニー(シングルコロニー)の有無や個数を観察し、記録する。
  13. シングルコロニーを釣菌し、抗生剤を添加したLB液体培地中で、振盪しながら選択培養する(37度, 12~18時間程度)。
  14. それぞれの大腸菌クローンからプラスミドを精製し、[プラスミドDNAの精製 1/2参照]、期待するライゲーション産物をもつ大腸菌クローンを同定する。*6

※図3(再掲):制作者、研修講師(理学博士)の許可を得て掲載

ポイント

  1. 菌液は常に氷冷する。混和の際に手の熱などで菌液を温めないように注意する。
  2. コンピテントセルの形質転換効率(107108 CFU/μg)とライゲーション効率をもとに、加えるDNAの量を決める。加えるDNA溶液の体積は、菌液の10%以下にする。
  3. 時間厳守。長時間のヒートショックは、大腸菌の生存率を下げてしまう。
  4. ここで抗生剤を添加したLB培地を用いると、大腸菌の生存率を下げてしまう。
  5. コロニーが過多で隣接コロニーが接してしまう(孤立コロニーにならない)場合、またはコロニー数が予測できない場合には、1%当量や0.1%当量など段階的な希釈系列を作製してプレーティングする。
  6. ライーゲーション産物の同定(形質転換コロニーのスクリーニング)[図3]
    ライーゲーション後の反応液中には、期待通りにインサートが連結された「当たり」のプラスミド[F]のほかに、インサートをもたないプラスミド(環状ベクター)[D]、期待とは異なるインサートが連結されたプラスミド[E]、インサート断片[B]、ベクター断片[C]などのDNA分子も含まれています。この混合液を用いてヒートショック処理を行うと、[B]~[F]のそれぞれのDNA分子を取り込んだ大腸菌クローンと、これらのDNAを取り込まなかった大腸菌クローン[A]が生じます。環状のベクター(プラスミド)を取り込んだクローン[D]~[F]は、形質転換により抗生剤耐性遺伝子を発現するため、抗生剤を添加したプレート培地上で選択的に培養され、コロニーを形成することができます。形質転換クローン[D]~[F]から期待するプラスミドをもつクローン[F]をスクリーニングするためには、それぞれのコロニーからプラスミドを精製し、得られたプラスミドに対して制限酵素マッピングやシーケンスなどの解析を行うことで、プラスミドの構造・配列を同定します。

*監修
パーソルテンプスタッフ株式会社
研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)
研修講師(理学博士)

リケラボ編集部

リケラボ編集部

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