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三井化学グループが100年以上にわたって培い、継承してきた素材や技術の「機能的な価値」や「感性的な魅力」を、あらゆる感性を駆使して再発見し、そのアイデアやヒントをこれからの社会のためにシェアしていく三井化学グループのオープン・ラボラトリー活動「そざいの魅力ラボーMOLp®︎ー(モル)」。
研究員の方が、通常業務とは別にチームを組み、「感性を駆使して」新たな素材の開発や新しい用途の提案に取り組んでいます。
機能重視のイメージが強い素材メーカと「感性」、一見不思議な組み合わせに聞こえるかもしれませんが、この活動から生み出されたプロダクトはどれもスタイリッシュでハイセンス、所持するだけで自分まで時代の先端に立っているような感覚になれるものばかり。
2018年に開催された展示会「MOLpCafé(モルカフェ)」では、素材の可能性を五感で味わうユニークな展示や製品を、開発した研究員の方々から直接説明を聞くことができ、ものづくりやアイディア創出に対する熱いハートが伝わるイベントとして大好評のうちに幕を閉じました。
☆2018年に開催されたMOLpCaféのレポートはこちら
そして前回の開催から約3年半。待望の第2回目が開催されました!
(開催期間:2021年7月13日~7月17日)
新型コロナウイルスの影響もあり、感染対策を行いながらの少人数での開催だったため、足を運べなかったという人も多いはず。たくさんの気づきと新たな視点を得ることができる素敵な展示の数々を、ぜひ会場に来られなかったみなさんにも届けたいという想いを込め、開催の模様をレポートします!
MOLpCafé2021の展示ラインナップ
フォトクロミックレンズ材料の魅力の深化に挑戦したアートワーク
フレキシブルコンテナ(フレコン)素材を使用したトートバッグ
廃棄予定のゴミ袋をアイロンをつかって何層にも貼り合わせたパスケース
SWP®︎(ポリオレフィンを噴射生成した多分岐構造の繊維)を天然素材で染め上げた紙素材
フォトクロミックレンズ材料に新開発の染色技術を加え、表面の色だけが模様として浮き出るようにしたSHIRANUIの進化系
地域特有の廃棄物をプラスチックとコンパウンドした「コンパウンドペレット」
研究所で集めた落ち葉をスタビオ®︎(三井化学が世界で初めて開発した植物由来のPDI®︎系ポリイソシアネート)に閉じ込めたエコシステムを考えるきっかけとなるコートフック
見て触って比較検討ができる素材キット
簡単に2室包装パッケージが実現できるロック&ピール®︎を使用した、FASTAIDウィルススウィーパータオル
内装にカッパーストッパー®︎(銅合金蒸着技術によりナノコーティングを施した新素材)を使用した、抗菌・抗ウィルス作用のあるマスクケース
/(Slash)O(Over noise)F(Frequency)。素材x音響の研究から生まれたアイデア。今回はおじさんの声の周波数を特定的にカットする素材を用いたアイデアボード
シンジオタクチックポリスチレンを使用したふわふわな触感のSPS不織布を使用したデザイナー鷲森アグリさんとのコラボジャケット
TPX®︎(三井化学が開発した、熱可塑性樹脂の中では最も軽い高機能ポリオレフィン樹脂)を糸状に加工し、織物、綿にして作ったプロダクト
/(Slash)O(Over noise)F(Frequency)の素材を活用した防音室
コンセプトは「NeoPLASTICism(新造形主義)」。プラスチックの未来を考える
今回のMOLpCaféのコンセプトは、「NEO “PLASTIC” ISM(ネオプラスチックイズム)」。これは、1920年にフランスで提唱された”新造形主義”を意味する「Neoplasticism(ネオプラスティシズム)」になぞらえた言葉です。
抽象芸術の先駆的運動として絵画のみならず彫刻、デザイン、建築といった分野にも広く影響を与えたネオプラスティシズムの思想は、芸術と技術を融合させ、工業における素材のあり方にも変革をもたらしました。
ネオプラスティシズムが唱えられてから100年。三井化学はこの言葉に“脱プラスチックから改プラスチック”の想いを込めて「NEO “PLASTIC” ISM(ネオプラスチックイズム)」という新たな解釈を施しました。
今までの固定概念を超えたプラスチックの可能性を、未来のためにすべきこと「Beyond(プラスチックのイメージを超えた本質的な価値)」と今だからすべきこと「Survive(プラスチックだからできる価値提供)」の2つのテーマを通じて伝える場。それがこの「MOLpCafé 2021」です。
サステナブルな未来に向けて素材はどのように変化していくべきなのか、そんな未来において私たちはどのような消費意識を持つべきか。こうした議論の結果、MOLp®︎メンバーたちが導き出したアイディアの数々が展示されています。
それでは、実際の展示を見てみましょう。展示を案内してくださった研究員さんたちの説明も散りばめながらご紹介していきます。
1.SHIRANUI – Photochromic De Stijl
こちらは光によって色が変化するプラスチック素材を活用したテーブル。屋外でサングラスに変化するメガネレンズの技術を使っています。天気や明るさによって表情が変化し、ステンドグラスのようなデザインが印象的。前回のMOLpCaféでも、こちらのMR™(三井化学が世界ではじめて開発した最高品質の光学プラスチックレンズ材料)を活用したボタンなどが展示されていたのを思い出しました。
研究員の方のコメント「三井化学は、高屈折メガネレンズ材料の世界シェアトップです。その素材を、何か新しい使い方ができないかという試行錯誤のもとこちらのテーブルが誕生しました。ところどころにつぶつぶ、キラキラと見えるのは、メガネレンズの端材。これまで使いみちのなかったものにも新しい価値を与えられたらと取り入れています」
そして次の展示コーナーへと進もうとすると、大きな袋が。こちらは粉体や粒状の貨物を保管・輸送するための「フレキシブルコンテナ」です。
研究員の方のコメント「こちらのフレコン(フレキシブルコンテナ)は、実際に当社でプラスチックの原料であるペレットを入れて、お客さまにお届けする際に使うものです。約1,000kgの荷重に耐えられる丈夫さを備えていて、15年使って廃棄するというルールがあるものの、使い終えてもその強度は80〜90%保たれます。せっかく強度が残っているのに捨てるのはもったいないということで、これまで廃棄してきたフレコンバッグを再利用する方法を考えました」
ちなみにフレコンバッグに使われるEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合ポリマー)は可塑剤が不要なため、可塑剤が揮発することによるベタつきや経時による硬化もなく、加水分解も生じないため長期使用が可能だそう。塩化ビニルと比べて約40%軽く、無縫製でシール加工もでき、修理して使えるのもメリット。長く使うことに適した素材なのです。
そして、15年使ってフレコンバッグとしての役目を終えた素材を再利用し、作られたのがこちらのバッグ。
2.RePlayer™ – Flecon Tote Bag
とても丈夫で軽く、機能性もバツグン。ところどころに見えるフレコンバッグ時代の名残もユニークです。右下にチラリと見えるのは同じくフレコンバッグを再利用したお財布。
今回のアイディアを機に、「今から15年後によりデザイン性の高い製品として再利用、そして長く使ってもらえるために」ということで、三井化学のフレコンバッグそのもののデザインを一新させた実物も展示。(さきほどのグレーのフレコンバッグが新デザインのもの)
3.RePlayer™ – Pass Case
レジ袋を再利用したパスケース。袋の文字を活かしたデザインやカラフルな色使いが個性的。
研究員の方のコメント「高密度ポリエチレンでできたレジ袋は、加工の段階で縦方向に延伸をかけているため、縦横の方向によって強度が違います。そのため縦横で貼り合わせることで強度が増し、強靭なプラスチック素材として活用することが可能になります。この構造は、防弾チョッキなどの製造にも通ずるものです」
廃棄予定だったレジ袋を、アイロンを使って熱で何層にも張り合わせて丈夫なパスケースに仕立てているそうです。原料である高密度ポリエチレンは高分子量で高強度、熱でシールできるなど、さまざまな特性を持ちます。海洋プラゴミとして目の敵にされがちなレジ袋ですが、使い方次第で素材の新たな機能を引き出し、活躍の場を作ることが可能なのですね。
4.ILO GAMI
こちらはプラスチックを原料にした合成パルプで作られた紙。食品や衣料品、建材、産業機器などさまざまな分野で活用されているそう。ポリオレフィンを噴射生成した多分岐構造の繊維「SWP®」によって作られています。こちらのILO GAMIはぶどうの絞りかすや柿渋などの天然素材で染められていて、深みのある美しい色です。
研究員の方のコメント「紙にプラスチックの合成パルプを添加することで強度を高めたり、新たな機能を与えることができます。こちらのILO GAMIは熱をかけると透けるようになっているのが特徴です。今回はその機能を活かして照明を作ってみました」
ほんのりと光を通す様が、空間をやわらかく照らしてくれて素敵です。
研究員の方のコメント「みなさんにものづくりを楽しんでいただきたいという思いもあって、こちらの照明はキットの形で販売もしています。ちなみに、キットに入っている材料はシェード部分の組み立てに使うILO GAMIだけ。スタンドの部分はデジタルデータの形で添付しており、お手持ちの3Dプリンタで作っていただいたり、自由にアレンジしてもらえるようになっています」
3Dプリンタが身近にない人は説明書に記載の連絡先にコンタクトをとればスタンド部分を作ってもらえるとのことなのでご安心を。
5.SHIRANUI – Geometrix
こちらは、先程のテーブルにも使われていたSHIRANUIのコートハンガー。こちらは色が変わるだけでなく、新開発の染色技術によって、光を当てることで模様が浮き出るプロダクトになっています。
研究員の方のコメント「これまでのメガネレンズ用素材では、光を当てると全体の色が変化するというものでしたが、今回は特殊な染色技術によって模様をつけることが可能になりました。インテリアアイテムを通じて時間や天気の移ろいを感じられる、つまりプラスチックによって人の心を動かせたらという思いのもと、コートハンガーというプロダクトにしています」
続いて目に飛び込んできたのが、たくさんのビーカーに入った粒状のものたち。
こちらは、お茶やコーヒーの出がらしなどの廃棄物。日本各地の特性が現れたもの、つまり名産品やその製造工程で出る廃棄物をピックアップしているそう。
研究員の方のコメント「なかでもひとつご紹介したいのが、漁網の廃棄物。海洋プラスチックの多くを占めるのが漁網などの漁具とされていて、これもきちんと再利用することが環境への取組として重要ではないかと考えています」
6.GoTouch(ゴトウチ)Compounds
こちらは、先程の各地域の廃棄物をプラスチックとコンパウンドすることで作ったトレー。緑茶殻やもみ殻、コーヒーかすなどが活用されています。名前の由来は、ご当地の資源を組み合わせ“GoTouch”すること。日本各地の未利用資源を有効活用することで、地域のロス削減や化石資源の使用量削減、さらには地方創生への貢献にもなることが期待されています。
7.GoTouch(ゴトウチ)Slow play
こちらは「長く愛してもらえるプロダクトを通じて、エコシステムや循環型の社会を想起できないか」という思いのもと作られたコートフック。閉じ込められた落ち葉から季節を感じることができ、なんとも風流です。
研究員の方のコメント「三井化学の研究者の多くが所属している袖ヶ浦の研究所で集めた落ち葉を乾燥させ、植物性の樹脂(スタビオ®)で固めています。枯れ葉も燃やすと二酸化炭素を生むため、このように毎日なにげなく触れるような別のものに活用することによって、量は少なくても命の循環や環境について考える一歩になるのでは、というご提案です」
スタビオ®は三井化学が世界で初めて開発した植物由来の樹脂で、従来のポリウレタン素材にはない高い反応性や耐薬品性、耐傷つき性、高光沢を活かして塗料や接着剤として活用されている素材。他の透明樹脂にはできない低温での成形が可能なため、今回のように焦げやすい枯れ葉も美しく固めることができたとのこと。
次のコーナーに向かうと、見覚えのあるプロダクトが。前回のMOLpCaféでも展示されていたビアタンブラーです。
こちらは海水のミネラル成分から生まれた『NAGORI™樹脂』で制作されており、ほどよくずっしりとした重みや、ひんやり&ざらっとした陶器のような触り心地が特徴的。それでいて、落としても割れない丈夫さを兼ね備えています。三井化学が誇るコンパウンド技術を用いた混合によって、樹脂の常識を覆す質感と熱伝導性を実現しています。
そのNAGORI™樹脂もここ数年でアップデートが重ねられ、さまざまな質感のものが開発されていました。
研究を重ねるうちに新機能も発見、抗菌効果にも期待できることが最近わかったのだとか。
新たに発見された抗菌効果への期待と、ひんやりと心地よい質感を活かし、毎日触れるプロダクトとして作られたNAGORI™樹脂のマウス。石庭に佇む石のような質感で、静寂の美を感じます。
8.MATERIUM™
次のコーナーへと進むと、キューブ形の素材サンプルがずらり。前回のMOLpCaféでも展示されていましたね。
研究員の方のコメント「色見本のように素材見本があればいいよね、という考えから、私たちはこのように、見て触って比較検討できる素材キットMATERIUM™を作っています。ちなみに、すべての素材を同じ形に揃えることには苦労もありまして……熱可塑性や熱硬化性の違いもありますし、流動性や加工温度、収縮率も異なりますので、素材によってさまざまな成形技術を使い分けています」
素材見本には、オノマトペによって質感を表現したシリーズや、天然素材との比較を楽しめるシリーズ、一見同じようなスポンジ素材でも触ってみると硬さや質感が大きく異なり驚かされるシリーズ、透明や白、黒など色を切り口にしたシリーズなど、ユニークなカテゴライズがされていました。
次の展示コーナーには、グリーンを基調としたおしゃれなプロダクトがずらり。なんだか実用的なものが多そうで気になります。
9.FASTAID™ – Virus Sweeper Towel 200
こちらは、このご時世に大活躍してくれそうな除菌タオル。
研究員の方のコメント「袋が2室に分かれていて、片方には消毒液(成分:次亜塩素酸ナトリウム、ROイオン交換高純水)、もう片方には乾燥したおしぼりが入っています消毒液側を指で押すことで中の仕切りが破け、おしぼりに消毒液が浸透するようになっています。おしぼりを使おうと思ったときに限ってカラカラに乾いていた……という経験をしたことがある方も多いかと思いますが、こちらは必要なときに新鮮な状態で使用できるおしぼりです。災害用備蓄品としての活用も期待されています」
力を加えれば仕切りは破けるけれど、それ以外の場所は破けない……という袋の機能を実現している「ロック&ピール®樹脂」。パッケージを製造する際のヒートシール温度を変えるだけで、完全シールとイージーピールを使い分けることができるのだとか。食品や化粧品のパッケージへの活用にも期待されている材料です。
10.MASK – UP
こちらは食事中などにマスクをかけておける「マスクスタンド」。たたむと高級感ある手帳のようでとてもスタイリッシュです。
研究員の方のコメント「内側にはカッパーストッパー®という素材(銅を合金蒸着する技術によりナノコーティングを施した三井化学の新素材)を使用しています。抗菌・抗ウイルス機能が認められており、マスクを挟んでおくことでスマートに抗菌できます。銅の欠点でもあった錆びやすさも、蒸着時の合金化によって解決されています」
11./OF 321 IDEA BOARD
こちらのパネルは吸音材が使われており、オンライン会議などでの気になる会話音を軽減してくれるというもの。片面には、油性ペンで書いても拭き取って消せる親水性のUV硬化コート剤ノストラ®が使われ、ホワイトボードのようにメモを取ることもできます。つなげて使用することも可能。
研究員の方のコメント「こちらの吸音パネルの名前である“/OF(スラッシュオブ)”は、“オーバーノイズとなる周波数を遮る”という意味です。オンライン会議全盛の今、研究者の「おじさん(自分)の声ってうるさい」という小さな気づき。そこで今回は、男性の低い声にフォーカスして一定の範囲の周波数をカットすることを目的に、吸音素材を組み合わせています。ちなみにこのプロダクトを作ったのもおじさん…というオチ付きです(笑)」
12.Vegan Down – SPS Nonwovens
お次は、洗練されたデザインの上着。じつはこちら、従来のポリスチレンとは立体構造が異なる「シンジオタクチックポリスチレン」を使用したダウンジャケットなんです。
三井化学はシンジオタクチックポリスチレンを不織布に加工することに成功し、ふわふわで軽く、暖かいという特徴を持つ高性能な素材として活用しています。
研究員の方のコメント「フェイクファー、フェイクレザーなど、プラスチックは偽物として扱われることが多いですが、羽をむしり取られる水鳥の動画を見て、動物の羽を使うことなく暖かいダウンジャケットを作ることができるというのもプラスチックの価値のひとつなのではと考え、こちらの“ヴィーガンダウン”を作りました」
脱プラスチックと言われるいま、プラスチックだからこそできることもある、という思いのもと生まれたプロダクトなのです。
13.Mono Material Thermalism
続いてこちらは、深みのあるグリーンが素敵なラグ。通常、世の中の高機能製品は複合素材から作られるものが多いですが、こちらのラグは表面から中綿の素材まで単一素材、しかもリサイクルに適したポリオレフィン素材で作られているため、リサイクルの際に分解・分別する手間が省けるスグレモノです。
材料になっているのはTPX®という樹脂。TPX®は化学的に安定した構造のため、食品ラップや医療用途、産業用途など幅広い分野で活用されています。ちなみに、お米がつきにくいしゃもじの素材としても使われているのだとか。
研究員の方のコメント「TPX®を糸にしてみると、暖かく丈夫で、汚れにくく、さらには非常に軽いという優れた特性を持つことがわかりました。このラグにワインをこぼしてしまっても、簡単に水で洗い流すことができます。水切れもよく、洗ったあとも短時間で乾いてくれるという利点も。災害時用の備品としての活用にも期待されています」
そして、隣を見るとなんともフォトジェニックなスペースが。
こちらはキャンプやグランピングなど、自然の中で過ごすことを想定したシーンにも、ここまで展示で見てきたプロダクトが馴染むことを示しているのだそう。
さきほどのTPX®のラグが敷かれ、フレコンバッグを再利用したかばんやイスもあります。
確かにキャンプシーンにも馴染んでいますね。それに、機能性や丈夫さといった面でも、アウトドア用品にぴったりですね。
そして最後に、少しだけ歩いて別会場へ案内していただきました。こちらでも展示が行われているほか、これまでに見せてもらってきたプロダクトの一部を購入することができる販売スペースもありました。
こちらは、先程も見せていただいた/OF(スラッシュオブ)を活用した防音ブース。
研究員の方のコメント「さきほどの展示では“おじさんの声をカットする”という説明もあったかと思います。そう言われると、おじさんを除け者にしているように感じられてしまうかもしれないのですが……決してそういうわけではなく、快適なワーク環境で作業をしてもらうことで、中にいる人も外にいる人も、互いに快適に過ごせるようになればと考えてつくったのがこちらの防音ブースです」
中をのぞいてみるとスタイリッシュな内装で落ち着きのある空間。窓は飛行機の窓を模しているそうで、ファーストクラスの快適な空間をイメージしているのだそう。
実際に中にも入らせてもらい、扉を閉めると、吸音材の働きもあってなんだか包まれているような、自分だけの空間を味わうことができました。外の音も聞こえず、作業に集中できそう。窓もあるおかげで決して閉鎖的な感じもなく、リラックスすることもできます。
気になる防音効果ですが、中で会話しても、外から扉に近づくとほんのりと音は聞こえるものの、何を言っているのかわからない程度にポワポワ〜と声が聞こえる感じ。こちらも吸音効果によって音の明瞭度を下げ、話す内容までは聞こえないようになっているそう。電話や会議も安心してできますね。
中の照明はスマートフォンと連携できるIoTを活用して、色や明るさを変えることができます。連絡が来たときなどに、光で中にいる人にお知らせすることも可能なんです。便利!
次に、なんだか実演をしてくださっているコーナーが。
射出成形の実演でした!
通常は金属の型を使い、今はほぼすべて機械によって行われる射出成形ですが、今回は樹脂の透明な型を使って手動で実演してくださいました。
型の中に材料が注入されていく様子がよく見えました。こちらはミラストマー®という、三井化学独自の熱可塑性エラストマーを使っているそうです。
最後に物販コーナーも見させてもらいました。
会場で案内してくださった研究員さんたちも着用していたこちらのTシャツ。おしゃれなデザインだなあと思っていたら、三井化学の歴史に縁の深いデザインなのだそう。
100年以上の歴史を持つ三井化学のルーツは、大牟田で産声をあげた石炭化学。そして当時の三井の化学事業では、ジーンズの染料としておなじみのインジゴ(インディゴ)の開発・生産が象徴的存在となっていたそうです。そして、そのインジゴを納入するときに使った1930年代の染料缶に描かれていたのが、こちらのデザインだったといいます。
ちなみに、こちらのTシャツの入れ物には、繊維産業から大量に廃棄されている紙管が活用されています。模様や色もさまざまでこちらもおしゃれです。
その後もふらふらと物販コーナーを見ていると…
ん??
レ、レジ袋が60万円!?!?!?
ちなみに一緒に置いてある、よくあるエコバッグは10万8,000円との表示が。
たまらず、近くにいた研究員さんに「袋、60万円なんですか??」と聞いてしまいました。
すると、「それを聞いてほしかったんですよ〜」と、にっこり。
研究員の方のコメント「LCA(ライフサイクルアセスメント)といって、資源の採取、生産、流通消費、廃棄にかかる環境負荷を算出する計算手法があって、こちらのレジ袋とエコバッグにはLCAに基づいた値段設定をしています。つまり、環境負荷上はこれだけのコストがどこかにかかっているはずなんです。ところが実際に販売されるのは、レジ袋の場合1枚2、3円。その差額ってなんなのだろう、ということを考えるきっかけにしていただきたくてこの値札を置きました。つまり私たちが負担していないコストが、環境に押し付けられているのかもしれない、ということです」
今回同時に展示されているフレコンバッグを再利用したトートバッグは、1万2000円で販売されています。LCAに基づく計算の結果、フレコンバッグを再利用したトートバッグとの比較でエコバッグは9倍、すぐに廃棄されてしまうレジ袋は50倍ほどの環境負荷があると算出されたことから、それぞれ10万8000円、そして60万円の値段がつけられたとのことです*。
*)RePLAYERバッグ(280g)、レジ袋(10g):150枚/年使用、エコバッグ(32g):1袋/年使用と仮定し、15年間使用した場合の比較(三井化学化学品安全センターにて算出)
たった数円のレジ袋が、実は何十倍、何百倍もの環境負荷をかけている…。このように実数値で表されると、問題の大きさにハッとさせられます。その負荷を軽減するためにも、今回の展示で見せていただいたような、再利用・再活用のアイディアは、今後とても役立ちそうです。
…ということで、全展示を駆け足ですがご紹介させていただきました。
ユニークな発想とスタイリッシュな製品の数々に「この素材にこんな使い方があるんだ!」とわくわくの連続だったとともに、展示ひとつひとつに込められたテーマや研究員さんの説明から、未来にむけたプラスチックのあり方、これからのサスティナブルについて考えるきっかけをたくさんもらいました。今回も見応えたっぷりで、本当にあっというまに時間が過ぎてしまいました。
今からすでに、次のMOLpCafé開催が楽しみです。MOLpCafé以外でも、MOLp®︎の活動で素材や技術の新しい価値や魅力が発見され続けていくことをこれからも楽しみにしています。
MOLp® | そざいの魅力ラボ
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/molp/
掲載写真:リケラボ編集部撮影
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