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さまざまな制作活動や音楽ライブ、おもちゃの開発などを手がけるアートユニット「明和電機」。青い作業服姿がトレードマークで、日本の古き良きものづくり中小企業をイメージさせる“社風”が特徴です。
ユニット名は、現“代表取締役社長”土佐信道さんのお父さんが経営していた電気部品工場からとったもの。子どもの頃慣れ親しんだ「ものづくりの現場」のエッセンスを活かした作品の数々は、「ナンセンスマシーン」と銘打たれる通り、独創的かつ不条理でインパクトのあるものばかり。アート作品と言えば通常は一点モノですが、明和電機の場合「量産」も重要なテーマ。作品のコンセプトを電機製品やおもちゃに落とし込んで身近な商品として大量流通させるなど、新しい取り組みを続けています。
今回は、そんな明和電機の初リアル店舗がアキバにオープンしたということで、お邪魔してきました。明和電機ならではの「アート」と「エンジニアリング」が融合したナンセンスマシーンの世界を垣間見るとともに、土佐社長にユニークでオリジナリティあふれるものづくりのヒントを伺います!
明和電機
土佐信道プロデュースによる芸術ユニット。青い作業服を着用し作品を「製品」、ライブを「製品デモンストレーション」と呼ぶなど、日本の高度経済成長を支えた中小企業のスタイルで、さまざまなナンセンスマシーンを開発しライブや展覧会など、国内のみならず広く海外でも発表している。2019年3月30日「明和電機 秋葉原店」をオープン。
https://www.maywadenki.com/
古き良きディープなアキバの世界へ!
というわけでやってきたのは秋葉原にある「東京ラジオデパート」。電気部品販売店が集まった、知る人ぞ知る老舗ビルです。店内には、所狭しと電気パーツが並び、宝探しにも似たワクワク感とノスタルジーに溢れる魅力的な空間です。昔はこうした電気部品を売る店が秋葉原のそこかしこに立ち並んでいたそう。
土佐社長は、大学時代から制作活動に使うための電気部品を探しに度々秋葉原を訪れていたのだとか。しかしその後、時代の変化とともに昔ながらのマニアックな電気部品店、いわゆる“ジャンク屋さん”がどんどん減っていく街の様子に寂しさを感じ「レトロな良さを残しながら何か新しいアキバの魅力の創出につながることがしたい」との想いから、かねてより計画にあったリアル店舗第1号の出店地をこの場所に決めたそうです。
明和電機のお店があるのは、ラジオデパートの2階。
真空管や可変抵抗などの部品を扱う小さな店がさながらアジアの夜市か中東のバザールのようにひしめくフロアの中に、ひときわ明るいブルーが目立つスペースを発見!
さっそくお店を覗いてみます!
なんと、土佐社長に直接お話しを伺うことができました。お店のこと、明和電機のナンセンスマシーンの世界のこと、いろいろ教えてください!
─ ─ ─ ─ ─
リケラボ編集部(以降、編集部):明和電機は、アートユニットながら「製品」を大量生産して多くの人に届けているのが特徴的ですよね。どうしてこのような形態が確立されたのですか?
土佐社長:子どものころから、父親が経営していた電気加工会社時代の「明和電機」を手伝ったり、ものづくりの現場が身近にあったことで、「一個」つくるよりも「たくさん」つくってみたい、という思いを自然と持っていたんです。それが、今のような「マスプロダクション」の形態につながっています。
編集部:お店にはどんなお客さんが来るんですか?
土佐社長:明和電機のことを知ってくれている人以外にも、部品を探しにふらりとラジオデパートを訪れたような人が「なんだろう」と立ち寄ってくれています。海外からのお客さんもとても多いですね。
編集部:土佐社長も、学生時代には秋葉原の街でよく部品探しをしていたのですよね?
土佐社長:そうなんです。もともとは絵描きになりたくて大学の芸術学部に入ったのですが、幼いころの体験や父の影響もあってジャンクパーツ(ほとんど廃棄処分になったような電気部品)を使った作品づくりをするようになりました。
一見どうやって使うのかよくわからないような部品をいろいろ眺めたり触ったりしていると、「このパーツはこんなふうに使えるかもしれない」とひらめいたり、そのときのひっかかりが後に役に立ったりすることがあったんです。固定概念に縛られずさまざまな“ナンセンスマシーン”を作る明和電機のものづくりの根底には、そうした体験が流れているんです。
そういうわけで、このお店でもジャンクパーツを扱ってるんですよ。
土佐社長:今はネットで何でも手に入る時代だけれど、やっぱり足を運んでこそ出会えるものや、気づけることがあるんですよね。それに、ネットで入手した材料とデジタル工作機械のように便利な道具で作ったものは、それなりに雰囲気の良いものはつくれるけれど、みんなどこか似たものが出来上がってしまう。オンリーワンで魅力的な製品は、リアルな物質を手であれこれ触りながら作ったり、どんなものも否定せずに“使いよう”を考えてみることで生まれてくるものだと思っています。
ものづくりで、街が、世界が盛り上がる
店舗に併設された明和電機プロデュースのレンタルスペース「ラジオスーパー」も見て見ましょう。「ラジオ」という言葉を「ラジカル(急進的かつ根源的)なオブジェ」と再解釈し、さまざまなクリエイターが電気や機械のしくみを使ったユニークな商品の数々を出品・販売しています。
土佐社長:点滅のスピードによってギャル度が計れます。速く光れば光るほど「超ギャル」です(笑)。
土佐社長:ちなみにラジオスーパーには、作品を「量産した製品として販売する」という出店のルールがあるんです。
編集部:ふつうアート作品といえば「1点モノ」であることに価値を置きそうなものですが…ここでも「量産」にこだわるというのが明和電機ならではですよね。出店者に対してまでも「量産」へのこだわりを徹底した背景には、どのような意図があるのでしょうか?
土佐社長:ひとつには、量産化するプロセスを通じて作品の本質的なアイデアが浮き彫りになることがあると思うからです。「この作品における量産しても薄まらない最も根源的な”おもしろさ”とは何か」を問うことは、ラジオスーパーに出店してくれるクリエイターの皆さんにとっても、難しくもやりがいのある試みになるはずだと考えています。
あとは単純に、量産することで、思わずクスっと笑ってしまうようなくだらなくておかしなものたちがあふれた世の中にもっとなればいいなと。つまり目的は、世界平和です!
編集部:目指すは笑いにあふれた明るく和やかな世界! まさに「明和」の看板に偽りなしですね!
さらにお隣の「ラジオギャラリー」では、展示も行われています。
この日行われていたのは「パチモク&コイビート展」。指パッチンで木魚を鳴らす「パチモク」と、昔ながらのスイッチを使ったシーケンサー「コイビート」といった、明和電機オリジナル楽器が展示されていました。
編集部:秋葉原の部品屋街が再び少しでも活性化すれば、という思いも店舗を構えるきっかけになったとのことですが、オープンしてから何か変化や手応えは感じていますか?
土佐社長:明和電機を見に来てくれたお客さんがラジオデパート内のほかのお店を覗いていたり、観光マップに掲載してもらえたことで、さまざまな人が足を運んでくれるようになったり、建物全体の活気が増してきたと感じているところです。
ここに来た人たちにも明和電機の製品やラジオスーパーの作品たちを見て「自分もなにか作ってみたい」と感じてもらえたり、海外の方々から「日本クレイジーだな」と面白がってもらえたらうれしいなと思っています。
オンリーワンのアイデアを生み出す秘訣は「飽きること」と「ノイズにふれること」
編集部:最後に、ものづくりに携わるリケラボ読者に向けてメッセージをお願いします!
土佐社長:オンリーワンのものをつくるには、常識にとらわれない考え方をすることが必要です。でも、「常識を超えろ」と言われたって、なかなか難しいですよね。そこでおすすめしたいのが、「飽きる」こと。何かを徹底的にやりきると、いつかは飽きが来ます。そうすると自分で遊びを作り出すしかなくなって、結果、思いもよらないおもしろいものが生まれるように思います。とにかくとことんやりこんで、早く飽きてみるといいと思いますよ。
そして、僕自身が部品店巡りを通していろいろなインスピレーションを得られたように、ときには秋葉原のジャンク街のような場所をうろうろして、たくさんのモノに触れてみることをおすすめします。ネットでピンポイントに情報を得られる時代だからこそ、あえて混沌に足を踏み入れて、自分が求めていなかった“ノイズ”にもふれてみると、今まで気づかなかったおもしろい見方ができたりしますよ。
─ ─ ─ ─ ─
レトロで懐かしいスタイルで新しいアートの世界を切り拓く明和電機がオープンした、“最先端のジャンク屋”。ふらりと訪れてみれば、ものづくりのヒントになるたくさんの“ノイズ”に出会えます。お仕事や研究の息抜きに立ち寄ってみてはいかがでしょう?
■明和電機 秋葉原店
東京ラジオデパート 2階
(〒101-0021 東京都千代田区外神田1丁目10-11 )
開店時間:10:00~19:00 火曜定休日
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