おもしろ実験や親子で楽しめる理系企画など、理系ゴコロをくすぐる情報が盛りだくさん。
私たちの生活の中には、「科学」で説明できることが多くあります。
見慣れている身の回りの自然を改めて科学的な視点で眺めてみると新しい発見や感動を知ることができます。毎日少しずつ変わる四季の変化から、いろんなサイエンスを親子で楽しんでみませんか。
今回は、空に浮かぶ雲のお話です。
飛び越えられる雲、飛び越えられない雲
私たちは帰省や、旅行、出張などで飛行機という交通手段を利用することがあります。空港を飛び立った飛行機はぐんぐんと空高く上がり、雲を飛び越えて雲の上に出ることがあります。離陸の時には雨が降っていても雲の上は晴れていてお日様の光が明るく降り注いでいることに気が付くことでしょう。
飛行機はいろんな形の雲を飛び越えて高く飛びますが、どうしても飛び越えることができないタイプの雲があることに気づいたでしょうか。雲にはいろんな大きさや形があり、いろんな色に見えます。どうして雲はこんなにいろんな形をしているのでしょう。飛び越えられる雲と飛び越えられない雲にはどんな違いがあるのでしょうか。
私たちは見上げればいつでもどこでも空を見ることができます。空に浮かぶ雲はいつでも観察できます。雲は天気に関する多くの情報を教えてくれます。毎日少しずつ空の雲を観察してみましょう。
物質には3つの状態が存在する~水の三態図(みずのさんたいず)
寒い外から温かいお部屋に入った時にメガネがくもって見えなくなってしまうことがあります。暖房をつけたお部屋の窓ガラスが結露することがあります。湯気のこもった温かいお風呂の扉を開けると、お風呂の壁にべっとりと水滴がつくことがあります。これらはすべて温かい空気と冷たい空気が接したときに起きる現象で、空気中に含まれていた水蒸気が水に変わって窓ガラスや壁に付いたのです。
物質には「固体」「液体」「気体」という3種類の状態があります。水(H2O)は固体の場合を氷、液体の時は水、気体の時は水蒸気と呼ばれます。温度や圧力の違いによって、水はどのような状態で存在するかが決まり、これを表した図を「水の状態図」と言います。
天気予報でよく報じられる気圧の単位1hPa(ヘクトパスカル)は1000Paのことです。上の「水の三態図」において、1気圧(1.013 x 105 hPa)の位置を横に辿ってみましょう。
0℃以下では固体、つまり氷で存在していることがわかります。0℃より温度が高くなると液体(水)として存在することになり、100℃を超えると気体(水蒸気)になります。つまり、水は1気圧では0℃以下で凍り、100℃で沸騰することが分かります。
余談ですが、この図を別の視点で見てみましょう。6.078 x 102 hPa以下の気圧を保ったまま温度を上げていくと、氷は溶けずに(水にならずに)いきなり水蒸気になることが分かります。インスタントコーヒーやカップラーメンなどの非常用食品などにフリーズドライという技術が使われていますが、これは凍らせた食品から氷(水分)を取り除いて乾燥させたものです。氷を水蒸気に変えて除去することで、食品のおいしさを保つことが出来ます。
雲はどうやってできる~飽和水蒸気量(ほうわすいじょうきりょう)
空気は水蒸気を含むことが出来ます。空気中に含まれる水蒸気の量は、気温によって異なります。ある温度で空気1m3が含むことが出来る水蒸気の最大量のことを「飽和水蒸気量」と言います。
地表付近の空気が温められると体積が増加して軽くなり、上空へと移動をはじめます(上昇気流=じょうしょうきりゅう)。上昇気流は山や斜面にそって流れるように上がる場合もあれば、そのまま垂直に上昇する場合もあります。
上空へやって来た空気は冷やされて温度が下がります。温度が下がるにつれて、空気が含むことが出来る水蒸気の量が減少し、飽和水蒸気量となる温度に達すると空気中の水蒸気が細かな水滴に変化します。この時の水滴はだいたい半径0.001~0.01 mmくらい で十分に小さく、重力より浮力が強く働くため地表には落下せずに空中を漂います。これが雲の正体です。
水滴の大きさが半径0.01mm より大きくなると、雨となって地表に落ちてきます。空気中に漂っている水滴は光の反射で白く見えます。重なり合って厚みが増すと次第に黒っぽく見えるようになります。その他、光の反射の具合によって美しい色に見えることもあります。
雲の種類(十種雲形)
空を見上げると、いろんな雲が浮いています。それぞれの雲はどれも色も形も違うし、時間によって刻々と変化し同じものは二度と見られません。空は毎日芸術作品を展示するキャンバスのようです。
そんな雲にも、よく観察していると、何種類かのグループに分けられることがわかります。雲が発生している高さ(高度)、雲の形、雲の大きさなどによって名前が付けられており、何種類かに分類されています。
イギリスの気象学者、ルカ・ハワードは雲を形により大きく3つ(巻雲、積雲、早雲)に分類しました。その後、アバークロンビーによってさらにくわしく分類され、彼らの研究が元になって1896年に世界で最初の雲の分類「国際雲図帳(こくさいうんずちょう)」が発表されました。現在は2017年版の国際雲図帳が最新版となっており、雲が発生する高度によって10類に分けられ、さらに形状によって15種に分けられています。
雲が出来る高度の違いによって10種類に分類される方法は「十種雲形(じゅっしゅうんけい)」と呼ばれており、現在使われている最も基本的な雲の分類となっています。
地球の周りにはおおよそ1万㎞の厚さで空気の層があり成層圏(せいそうけん)と呼ばれている。そのうち内側のおおよそ11㎞くらいの層を対流圏(たいりゅうけん)といい、空気や熱が対流を起こして雲や雨などの気象現象が起こる層です。
上層雲
上空10㎞(10,000m)以上を上層といい、ここに出来る雲を上層雲(じょうそううん)と言います。羽毛を散らしたような巻雲(けんうん)や巻雲が集まってもう少しはっきりした巻層雲(けんそううん)や巻積雲(けんせきうん)などがあります。
中層雲
上空5㎞(5,000m)から10㎞(10,000m)までを中層といい、この範囲に出来る雲を中層雲(ちゅうそううん)と言います。ひつじ雲やいわし雲と表現される高積雲(こうせきうん)や高層雲(こうそううん)があります。
低層雲
上空2㎞(2,000m)から5㎞(5,000m)までを低層といい、この範囲に出来る雲を低層雲(ていそううん)と言います。晴れの日によく見かける綿のような真っ白い積雲(せきうん)や雨を降らす乱層雲(らんそううん)などがあります。
対流雲
2㎞(2,000m)以下の低い空にできる雲を対流雲(たいりゅううん)といい、雨の日に山を隠してしまう層雲(そううん)などがあります。
積乱雲
真夏によく発達し激しい夕立をもたらす入道雲と呼ばれているのは、積乱雲(せきらんうん)と呼ばれている雲です。この雲は、下層から中層をへて上層まで発達し、雲が出来る最高高度まで達したのち横に広がります。とても急激な空気の流れ(上昇気流)が起こっていることがわかります。
私たちが乗る旅客機は、10,000mくらいの高さを飛ぶことがあります。積雲や高積雲は飛び越えることが出来ますが、巻雲の上を飛ぶことはありません。上の写真は旅客機が上空10,000mを飛行している時に撮影したものです。眼下に積雲や高積雲、乱層雲などが見え、上の方に巻雲が見えているのがわかります。
乱層雲の下では雨が降っているかもしれませんが、雲の上では良い天気で良く晴れています。今日の空には、どんな雲が浮かんでいるでしょうか。
信号待ちの間、電車の窓から、少し顔を上げて雲の様子を眺めてみませんか。
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参考文献)
岩槻 秀明 著「気象学のキホンがよ~くわかる本[第3版]」(秀和システム・三松堂印刷株式会社、2017年12月25日出版)
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