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就活を成功させるための企業研究、後編です。
前編では、「企業研究をする本当の意味」と「企業研究の前にまずは産業界全体を広く俯瞰し、自分が働いてみたい業界を複数ピックアップする」ということをお伝えしました。後半は、いよいよ具体的にその業界の個別企業について、どのような視点でリサーチし志望動機を組みたてていけばよいかお話していきます!
STEP3
ピックアップした業界の全体像を把握しよう!
ポイント ・ビジネスモデルを理解する。将来性を検討する。 ・業界解説本など書籍も便利。 |
個々の会社を個別に調べる前に、まずその業界全体を概観しましょう。近年の動向や、業界をけん引している主要な企業を確認します。また、どうやって利益を得ているのかを調べましょう。企業活動は、通常は基礎研究の知見をもとに商品やサービスを開発・企画します。商品が完成したら、仕入をし、加工・付加価値を加え販売することで利益を得ています。その一連のビジネスの過程の中で、何がその業界の肝(利益の源泉)なのかを理解することが大切です。また、他の業界とどのような関連性があるかも把握しましょう。理解を深めるには、書籍がお勧めです。各業界の概要や動向をより詳しく一冊ずつにまとめた「業界本シリーズ」が複数の出版社から出ています。図書館や書店で見比べて、いちばん自分にとってしっくりくるものを選んで、ピックアップした業界いくつかについて読んでみましょう。
また、書籍などで得た情報を整理するには4つの視点が有効です。その業界に影響を与える可能性のある「政治的な要因」「経済の動き」「社会的なニーズ」「科学技術」の4つに分けて整理すると、思い込みや主観に偏らずに検討できるので試してみてください。(Politics(政治)、E= Economy(経済)、S=Society(社会)、T=Technology(技術)の頭文字を取ってPEST分析と呼ばれます。)気になる将来性についても、PESTで整理することで、ある程度客観的な見通しを持てるようになります。
STEP4
個別企業を調べて比較してみよう!
業界全体についての現状や将来の展望について、自分なりに理解出来たら、いよいよ個別の企業のリサーチです。それぞれの会社の業務内容や社風、特徴をさまざまな方向から調べます
同じ業界でも会社ごとに力を入れている分野が違います。そこに企業の意志や強みが見て取れます。例えば、製薬会社で考えてみましょう。病院で処方される医療用医薬品とドラッグストアで売られている市販薬のどちらに力を入れているのか、売上比率を見ることで分かります。医療用医薬品が主力の企業でも、得意な疾患領域やこれから注力していこうとしている分野は各社異なります。電機メーカーではどうでしょうか。冷蔵庫や洗濯機などの家電が得意な企業と、半導体など精密機器が得意な企業、産業機械が得意な企業など、それぞれ特色があります。
面接の場で、その企業があまり力を入れていない分野についての志望動機を熱心に語っても、的外れでしかないですよね。このことからも企業研究の重要性がご理解いただけると思います。
情報源は、会社HP、四季報、就活サイト、ファイナンシャル情報、その他ニュース。活動が本格化すると、合同説明会やOBOG訪問などからも情報収集できます。
情報を整理するには、よく言われるようにマーケティングで用いられるSWOTや3Cを使うことも有効です(次章を参照)。HPを見ただけでは分からない情報も多いので、まずは公開されている情報をSWOTなり3Cなり何らかのフォーマットに落として整理しておきます。同じフォーマットであれば同業界のA社とB社の違いも鮮明になります。リサーチを進めていくうちに、「この部分の情報は少ないな」と情報自体の偏りに気づいたり、「どうしてA社はこうでB社はこうなのだろう?」とか、「これまでどおりの成長は見込めなさそうだけど、今後の展開はどのように考えているのだろう?」など、事業活動そのものについてもっと深く知りたい点が出てきたら成功です。その疑問は、後日の企業説明会やOBOG訪問の機会にぜひ失礼にならない範囲で素直にぶつけてみましょう。本質的で生きた情報が得られます。結果、その企業についての理解が急速に深まります。
企業研究は、調べることその行為自体で満足しがちですが、折に触れて、集めた情報を眺めながら、それぞれの企業に対して、自分が共感できる点、自分の強みが活かせそうな点を考えてみましょう。この段階を経て、志望企業の順位が変わることもよくあります。
まとめ
・企業研究は、書籍やネットの公開情報を暗記することではない。 ・得た情報は常に、「Whyなぜ?」「Howどうやって?」を考える。 |
企業研究に役立つフレームワーク
言うまでもないことですが、ビジネスの世界は常に激しい変化にさらされています。5年前に「強み」だった技術が、他社の新技術の出現で市場価値が一気に下がってしまうことは日常茶飯事です。一方で、たった数年で私たちのライフスタイルを変えてしまうほど、業界地図を塗り替えるような技術革新が起こる可能性はどんな産業にも秘められています。企業の戦略や持っている技術、長年の研究開発の成果によって、新しいビジネスチャンスをとらえて大きく飛躍する可能性は無限にあるのです。
皆さんが応募しようとしている企業も例外なく、将来にわたって事業を継続していくために生き残りをかけて戦略を練っています。SWOTや3Cは、ビジネスの世界で自社の現状分析と将来戦略を考えるための定番と言われるフレームワークです。自分がその会社の経営者になったつもりで、この枠組みを使って収集した情報を整理してみましょう。ある程度情報が埋まったら、今度はその会社の社員になったつもりで、あなた自身がどんな貢献できそうかを真剣に考えてみます。その際は、根拠となる自分の強みやスキルの裏付けを忘れないようにしましょう。このようなプロセスを経て出た答えが、あなたならではの「志望動機」、つまり採用担当者の心に残る「志望動機」です。
■SWOT分析
自己分析編でも紹介したSWOT分析。対象企業の特徴を下記の4つの要素に分類して記入していきます。
▼内部要素(製品力、営業力、知名度など)
S:強み・・・その企業の優れているところは?
W:弱み・・・その企業の課題は?
▼外部要素(政治や経済、顧客のニーズなど)
O:機会・・・その企業にプラスとなる社会の動き
T:脅威・・・その企業のリスクとなりうる社会の動き
自己分析で実施したSWOTと、各企業のSWOTを並べて見てみます。
たとえば自分の強み(S)が「何事も粘り強く丁寧にやり遂げることができる」だったとして、「意思決定が早く新しいことに次々と挑戦する風土がある」ことが強みのA社と、「徹底した安全性へのこだわり」が強みのB社、どちらと相性がよさそうでしょうか。あるいは脅威(T)において「地球温暖化対策で化石燃料由来の製品の生産の規制強化」を受けて化学メーカーC社は今後どのような戦略を取りそうでしょうか(O)、そこでアピールできそうな自分の強み(S)は何でしょうか。そんな視点で分析をしていくことで、自分に合う企業かどうか、さらにはどのような自己PRにつなげることができそうかを言語化していきます。
■3C分析
顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)それぞれの頭文字から3C分析と呼ばれます。
3つの要素を相関的に可視化することで、その企業がいま向かうべき方向性を客観的に見ることができるのが、3C分析の利点です。
顧客(Customer)…顧客や市場のニーズは何か?
競合(Competitor)…競合は何を強みにどのような戦略をとっているか?
自社(Company)…自社は何を強みとし、顧客のニーズにどのように対応し、競合とどのような差別化を図るか?
応募企業・競合企業・市場(顧客のニーズ)を整理して、応募企業が今後どんな戦略を取りそうか想像してみましょう。顧客が求めていて、競合他社がやっていない(できていない)ことにビジネスチャンスがあります。そこに自分の活躍の場はありそうでしょうか?あると思えたら、理路整然と(しかし心を込めて)面接で語れるようになります。よくある通り一辺倒な志望動機より、面接官の印象に残ること間違いなしです。
SWOTも3Cも実は非常に高度で難しい分析ですが、その企業を理解する大きな助けとなります。注意点としては、くれぐれもこの表を埋めること自体が目的にならないようにすること。企業研究は誰も知らないトリビア情報を集めたり、情報通になるのが目的ではありません。情報を整理しながら、その企業がどうして今の姿になったのか、今後どうしていこうとしているのかを自分なりに理解するためのものです。
立てた仮説や導いた結論は、必ずしも正解でなくても構いません。
枠組みを使って情報を整理し、その背景や今後の会社の方向性について自分なりに理解しようとすること(Why)。それに加え、応募企業の社員になったつもりで、その会社の成長のために自分は何ができるのかを様々な角度から論理的に考えること(How)、その思考プロセスこそが、本当の意味での「志望動機を固める」ことであり、応募企業に対する熱意やあなたの論理的思考力を表現するということが分かっていただけたら嬉しいです。
ところで、以前、自己分析には、価値観(志向)と能力のふたつの側面があるとお話ししました。企業も同じように、価値観(志向)と能力(強みや機会)の軸で整理できました。並べてみればマッチング度が高いかどうか、ご自身で納得ができると思います。下のような図で整理できれば、スッキリと意思決定しやすいと思いますので参考にしてみてください。
ここまで、シリーズを通して読み進めてきてくださった方は、自己分析と企業研究の目的・関連がご理解いただけたと思います。みなさんの成功をお祈りしています!
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