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理系就活Q&A Z世代が就活で知っておくべき採用企業の期待と不安│リケラボ

Z世代が就活で知っておくべき採用企業の期待と不安:理系就活Q&A 第7回

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こんにちは。サインキャリアデザイン研究所の篠原です。フリーランスのキャリアコンサルタント(国家資格)として学生向けのキャリア支援を行っており、理系大学を含む複数の大学でキャリア科目・就職支援講師として活動しています。人材業界でも17年間、企業の新卒採用支援や自社の採用業務、新入社員の教育担当などを行っていましたので、採用企業が新入社員に求めているもの、新入社員が会社に求めているもの両方を知っていることを強みとしています。

ある理系大学では長年にわたって、多くの学生の皆さんの就職活動における迷い、悩み、頑張りに触れてきました。また企業の方たちと協力して理系向け就職セミナーや、技術職社員の方たちとの座談会などの運営経験もあります。そうした活動を通じて実感してきたのは、就職活動という場そのものが、学生さんそれぞれの気付きや見直し、成長のステージになり、いかにそこから逃げずに向き合っていくことが大切であるかということです。

このシリーズでは、そんなこれまでの実際の先輩たちの就職活動における成功や失敗の事例も多く取り上げながら、よりリアルに理系の就職活動の進め方をイメージしていただける記事を発信できればと考えています。

今回のお悩みは、こちら。

Z世代と言われ、何かと大人から不安視されているようですが、就活ではどんなことに気を付けたらよいのでしょうか?

デジタルネイティブ、ダイバーシティ、パラレルキャリア・・・そのような言葉で表現される学生の皆さんはZ世代という言葉でくくられてしまうことも多いですよね。普通に過ごしているだけなのに、いったいZ世代の何が問題なのか・・・と思っている学生さんも多いようです。

今回の理系就活Q&Aでは、大人世代、つまり採用企業側の人からZ世代はどう思われているのか?Z世代の何に期待していてまた何を不安に思っているかをお伝えします。相手を知ることは、就活においてもその先の仕事においても大切な第一歩。自分が志望する企業から自分を必要としてもらうための視点を紹介していきますので、是非就活の参考にしてください!

Z世代の採用にあたって企業は

Z世代とは諸説ありますが、だいたい1996年から2012年の間に生まれた人を指していることが多く、言われている特徴は、多様な個性や価値観が尊重される時代に育っており、さらにデジタルネイティブであるということです。その世代である皆さんが就職する年になり、色々なカルチャーギャップに戸惑っている企業が少なくない、というのが現状です。

皆さんのお父さんお母さん世代以前の会社員というのは、会社や上司の決めた目標に対して、皆で一丸となって頑張るものだ、ということをほとんどの人が疑わない時代でした。ですが、Z世代と言われる皆さんは違いますよね。多様な個性や価値観を大切にするという教育を受けてきた皆さんは、一人一人がそれぞれの個性や価値観に基づいて頑張るからこそ社会が良くなる、と考えている人が多いと思います。自分自身で課題を発見し、解決法を考えることを奨励されてもきました。なので、昔ながらの上意下達な会社運営(上の地位からの一方的な指示に従うスタイル)にはなじまなくなってきていると言えます。このギャップを企業がどう受け止めるべきか?企業側がZ世代の価値観に合わせた転換をすべきか?それともZ世代に企業側の期待を受け入れてもらえるか?各企業、いろいろと模索をしている状況だといえます。

また、デジタルネイティブなZ世代は、コロナをきっかけに拡大したオンラインでの説明会や面接など、就活においてデジタル技術を活用することに何の抵抗もありません。皆さんにとっては便利な状況でしたが、企業側はオンラインでの採用活動について、いまだかなり模索段階にあるということも付け加えたいと思います。(対面で話すからこそ相互理解が深まると考えています)。また、ネット検索や生成AIなどにより、あらゆる情報が簡単に入手できる便利さの反面、みんなが同じ情報を得て同じような就活対策をするようになったため、ESや面接の回答が画一的になり、応募者が皆似た者同士に見えてしまうというのも、企業側に多い声です。

こうした企業側の背景を理解したうえで就活に臨む方が、成功率がアップすることはご理解いただけますよね。世の中は人手不足で理系学生の内定率も高水準ですが、大手を中心に人気企業の競争率は依然高いままです。志望企業への就職を果たすためにも是非企業側が感じていることを少しだけでも知っていただきたいと思います。

次章からは、採用企業がZ世代の就活生に感じた典型的な声をご紹介していきますね。

企業が危惧する学生の「考える力」

私自身、SNSX(旧twitter)を長年やっているのですが、学生の皆さんの就活アカウントを見ていると、“就活無双”を自負するアカウントの「これを話せば好感度アップ!」「この逆質問で大逆転!」といった発信にやたら心動かされている様子がみてとれます。結果としてどうなっているか?実は「これを話せば評価アップ」というようなテクニック的なものは、企業側から見ると「この学生もまた同じだ・・・」となり、学生の想いとは裏腹にその他大勢のなかの一人として埋もれてしまっています。ありきたりの就活テクニックによって、本来の自分自身を封印し、自分から個性の見えない多数派になろうとしているということを知ってほしいと思っています。

例えば昨年ある学生がこんな話をしてくれました。

「昨日の面接で『もし内定をいただけたら、入社までの間にどんなことに取り組んでいけばいいですか?』と聞いたら、『その質問、流行っているのかな?今日、あなたで4人目の面接だけど、前の3人とも同じ質問でした・・・』と言われました。確かにネットで調べた逆質問だったのですが・・・」。

もったいないですよね。他の学生に差をつけようと思って調べたテクニックを、むしろ「またか」と思われてしまうなんて。これはデジタルネイティブといわれる世代ゆえの弊害だと思います。企業は多くの応募者のなかからキラリと光る逸材を見つけたいと考えています。他を真似るのではなく自分自身で考えるということ、他にはない自分自身の考えを持つということを大切にしてください。自分自身の考えは様々な経験や知識があってこそ生まれてきます。ネットで検索するだけでなく、インターンシップなどの社会経験を含め自らの経験値を高めることで他の人とは違う「自分の考え」が確立されていきます。ぜひ積極的に経験を求めて下さい。

コロナを経て苦手意識が高まる「対話力」

コミュニケーション、得意ですか? 企業の方と話をしていて、最近よく耳にするのは「学生が電話に全く出てくれなくなった」という話です。私は普段、大学で仕事をしているので、学生にも話を聞くと「いやいや、もう電話で話す時代じゃないでしょ」と返ってきます。しかし、根っこにあるのは、そんな時代じゃないから・・・ではなく、電話に出るのが面倒になっているからとはいえないでしょうか?人とのリアルの対面での対話の機会を失ったといわれる新型コロナの期間を経て、電話に限らず、学生の対話力の低下に危機感を感じるという声は多く聞かれます。

会社説明会や対面での面接などの場で、学生の無表情が目立つようになってきたという企業側の声もあります。言葉を使って話すという対話以前に「人と相対するときの心の持ち方」が少し以前と比べても、変化を感じます。無理に作り笑いをする必要はありませんが、あまりにも感情表現に乏しいと、どんなにその企業に入社したいと心で思っていても伝わりにくくなってしまいます。表情や身体の向きなど、ノンバーバルなコミュニケーションを含め、対話を通じて信頼を築く関係は、ビジネスの世界だけでなく、政治の世界でも普段の生活の場面でもまだまだ大切な時代は続いていくと思います。人と直接話すことに前向きな明るい表情、それだけであなたの印象はぐっとアップします。まずここから意識してやってみよう。そう思っていただければ幸いです。

志望動機で損をしやすいZ世代

Z世代を象徴する言葉にパラレルキャリアというものがあります。これは本業を持ちながら、副業やボランティアなど第二の活動をすることを指しますが、転職意向の高まりも指しています。株式会社リクルートの調査によると26歳以下の転職意向者はここ5年で2倍に増えたというデータもあります(※)。これは、終身雇用が当たり前で、一生勤める前提で就活をした少し前の世代とは全く異なる価値観です。もちろん新たな世代の価値観として否定されるものではありませんが、採用する企業にとっては少々困ったことでもあります。

なぜなら多くの企業は、入社後に活躍してくれ、そのキャリアをゆくゆくは後輩や部下たちの育成に活かしてくれるような人材を求めています。この辺りは冒頭で触れたとおり、会社側がZ世代の価値観に合わせた転換をすべきか?それともZ世代に会社側の期待を受け入れてもらうか?と悩んでいるところでもあるのですが、採用企業、就活生両方と接点を持ってきた私個人の見解としては、会社の幹部候補生採用といわれる新卒採用で、「私は御社を最初のスタートにしていろいろ転職していきたいと思います」というスタンスではない方がきっと良い結果が得られるのではと思っています。パラレルキャリアにしても、それ自体否定はしませんし会社にも社員にもメリットが多いことも言われていますが、社会人として最初に受け入れて育てる企業の立場になって考えれば、「自社の仕事にまずは精一杯取り組んでくれる人を採用したい」と思うのが自然ではないでしょうか。

そういう観点で志望動機を考えていく際にお勧めしたいのは、その企業への興味の理由だけでなく、目的を動機に考えてみるということです。それは「どこに興味があるから志望しました」ではなく「御社でこれをするため(実現するため)に志望しました」というものであり、主体的な問題意識を示すというものになります。問題はその企業が関わる社会分野で課題視されていることなどが対象になるでしょう。環境問題、国際問題、高齢化社会に向けた課題などに対して、その企業の事業で何を目指していきたいのか?入社後に自分がその会社で取り組みたい課題まで語ることができたなら、自社での活躍を本気で望んでいる学生だと評価してもらえると思います。

(※)株式会社リクルート Z世代[26歳以下]の就業意識や転職動向(2023年8月30日)より引用

ES添削、自己PRやガクチカ・研究内容の書き方のコツ

学生の考える力に対する危惧があるということを前半で触れましたが、自己PRやガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を紹介する際にも、その企業の不安点を意識した説明をできれば、考える力が発揮され、あなたの良さが際立ちます。

ESの添削をしていて、いつも非常に勿体ないと感じていることをお話しします。

ESの自己PRやガクチカ欄では何らかの活動や取組みを記入しますよね。ですが、その活動を始めたきっかけにまで触れているものはあまり見たことがありません。「なぜボランティアや留学経験などをやろうと思ったのか」と訪ねると、その背景には本人独自の考え方があり、思わず「へえ!そうだったんだね」と生き生きとした人柄を知り、感心することがとても多いです。そこで私は、ESの指導をするときは、「ぜひ活動のきっかけから書いてみてはどうか」と勧めています。書かれていなければ、どんな素晴らしい考えでその取り組みをしたのかが伝わりません。留学やボランティア以外にも、学校や地域、研究の過程で課題解決に取り組んだことも、なぜそれをやろうと思ったのか、という理由の中に、確固とした考える力を見ることができるのです。

もう一つ残念な例を紹介します。

ESには産学連携やビジネスコンテストなどプロジェクトといわれるものに取り組んだエピソードも書かれることが多いのですが、立案までの工夫やメンバーたちの動きは示されているのに、実際に何を立案したのかという本来のゴールが示されていないものが目立ちます。いわゆる「何を発表したのか」ということに最後まで触れていないということです。その立案内容こそ自分たちが皆で考え抜いた成果であり、志向性を伝える情報なのにもったいないと感じています。

大学での研究内容や実習についての説明を行う際にも、コツがあります。自分自身が考えた解決策など、創意工夫部分を積極的に紹介するようにしてみてください。ES添削をしていて大変多く見られるのは、ただ作業的な工程の説明に留まっている記述です。そこから自分ならではの考え方や強みを引き出せずに終わっているESが多くあります。卒業研究などは先輩から引き継いだ継続研究になることも多いと思いますが、だからこそ、ただの作業説明だけになってしまわないように注意してみてください。(与えられた課題をどのように自分事として理解し自主的に取り組んだかが大事です)

能動的ですか? 就職活動の場で意識・実践したい自分から動く姿勢

色々とZ世代の学生に対して企業が持っている感想をもとに、皆さんへ就活のアドバイスをさせていただきました。新しい価値観で新しい時代を創っていってくれるとの期待はありつつも、Z世代の採用について、企業はどちらかといえばまだ不安視していることの方が多い印象です。便利になっていく社会のなかで育った学生の皆さんに企業の方が追いついていないとも言えるかもしれませんが、自分自身で課題解決していく力が求められる仕事の場において、考える力や人とのコミュニケーションに対する不安は無視できないものだと思います。

就職活動の場で何より皆さんにその意識と実践をお勧めしたいのは、自分から動く姿勢です。これは単に対話力、コミュニケーション力というだけでなく、自分から動く姿勢そのものが、皆さんが相手をどう捉えているかという考え方の発揮でもあるからです。相手の動き待ち、指示待ちに徹するのではなく、自分から挨拶する、連絡する、確認を取る。オンラインの面接であれば、面接官に「ビデオオンにできますか?」と言わせず、自分からすぐにオンにするということ。そのような細かな一つ一つの心がけが、企業の不安を払しょくし、就活が実を結ぶ成果になっていくと思います。

自分の未来に期待してもらうということ

企業にとって採用とは、学生の就業を叶えてあげる社会貢献活動ではなく、あくまで自社の将来のための先行投資活動です。好きといえば思いが伝わるものではなく、あくまで企業は自社の未来を託すことができる人物かどうかという視点で応募者を見ています。つまり、未来のあなたに期待を感じるからこそ、採用を決めるのです。転職および職業選択の自由は個人の権利ですが、新卒の就活では、まずはその企業の未来を支えるんだとの心持ちで志望企業を選びましょう。

その企業に対して興味のある理由だけではなく入社の目的を示し、その目的を示すために、社会の動きなどから今解決すべきことや、自分とその企業で解決できることを整理してESや面接で伝えていきましょう。自分自身で考え、さらに主体的に取り組んでいく力があることがしっかり企業に伝わる大きな意思表示になると思いますし、なによりも就活を通じてこうした準備をすることで、社会に出てからも自分自身が納得のいく職業人生を歩んでいけ、満足度の高い人生を送れる確率が高まります。応援していますので、頑張ってください!

篠原功治

篠原功治

キャリアコンサルタント
サインキャリアデザイン研究所代表・国家資格キャリアコンサルタント・JCDA 日本キャリア開発協会会員
2009年に学生・若年者を対象としたキャリア支援活動を事業とするサインキャリアデザイン研究所を立ち上げる。理系向け就職セミナーや技術職社員との座談会・パネルディスカッションをはじめとする理系大学生向けのキャリア支援にも長年携わっており、現在は大学でのキャリアデザイン科目・就職支援プログラム講師、企業・就職支援機関とコラボレーションした学生向けキャリア・就職支援プログラムの企画・実施、企業における営業研修などを務める。

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