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「なぜ?」「どうして?」が科学でわかると、いろいろなことを観察するのが楽しくなるよ。
今回は、「おふろで指がシワシワになる理由」を考えてみよう!
おふろでびっくり!指がシワシワになってる
みんなは、おふろに長くつかっていると「指がシワシワになってる!」「なんだか気持ち悪い…」と思ったことはない?
これには、きちんと科学的な名前がついていて「漂母皮化(ひょうぼひか)」って言うんだ。
もし、今度この「漂母皮化(ひょうぼひか)」に気づいたら、足のうらも見てみて。きっとシワシワになっているよ!
でも、おなかやうではどうかな?きっとほとんどシワシワにはなっていないはず。
どうして指と足のうらだけ、シワシワになるんだろう?
おふろには水、お湯、シャンプー、せっけんなどがあるけど、関係しているのかな…?
まずは、何が原因かな?予想してみよう!
実は、シワシワになる理由は、完全にわかっているわけではないんだけど、いろんな人がいろんな説をとなえてきたよ。
代表的な4つの理由を紹介するね。
(ひとつは間違った仮説だよ)
<仮説①>
皮膚(ひふ)のぶあつい部分が水を吸収(きゅうしゅう)すると、シワシワに見えるから
1つ目に考えられている理由は、「皮膚の一番外側の部分=角質層(かくしつそう)が、水を吸収しているから」だよ。
長い間ずっと、この説は正しいと考えられているよ。
<仮説②>
神経(しんけい)が、指をシワシワにしようとしているから
2つ目に考えられている理由は、「神経が、指をシワシワにしている」という説。
最近の研究で、この説も有力になってきているよ。
ある研究者は「水を保とうとして、神経が血管(けっかん)をちぢませているのかもしれない」とも言っているよ。
<仮説③>
ぬれた指足でも、物がつかみやすくなるから
3つ目に考えられている理由は、「ただシワシワになっているのではなく、シワシワになるといいことがあるから」という説。
もっと具体的に言うと「シワシワになることができた人間だけが、生き残れたのでは?」ということ。
2つ目の説と同じように、これも最近のある研究からわかってきたよ。
<仮説④>
しんとうあつによって指に水が入ってくるから(これは後に否定されている)
昔は「おふろのお湯が、人間の体に入ってきているのでは?」と考えられたこともあったみたい。
最近では、これは違うと言われているんだけどね。
もう少し詳しく説明すると「浸透圧(しんとうあつ)という科学現象のせいで、おふろの水が体に入ってきている」と考えられていたんだ。
まず、人間の体の中には、いろいろなものが入っているよね。でも、おふろの水にはそんなにいろいろなものは入っていない。
体とお湯がくっついたとき、お湯はいろいろなものが入っている体の方に動いていく。
こういう科学現象のことを「浸透圧」って言うんだ。
実は、これは「キュウリの塩もみ」「塩キャベツ」にも起こっている現象!
野菜に塩をかけると、野菜から水が出るのも「浸透圧」なんだ。
野菜の中には塩はあまり入っていないけど、野菜の外側には塩がいっぱいある状態(じょうたい)になるよね。
そうすると、野菜の中の水が、塩がいっぱいある外側に動いていくからだね。
なぜこのように考えられているの?
ここからは、上にあげた仮説がどうしてそのように考えられているのか、解説していくね!
<仮説①の解説>
表面の細胞(さいぼう)は水をふくみやすい
どうして皮膚の一番外側は水をふくみやすいんだろう?
その理由は、死んだ細胞でできているから!
そもそも、皮膚は外側から順に「表皮」「真皮」「皮下組織(ひかそしき)」っていう3つの層がある。
一番外側の「表皮」は、さらに細かく5つの部分に分かれているんだ。
「表皮」の一番外側は「皮脂膜(ひしまく)」っていう部分。
この皮脂膜は長い間、おふろにつかっていると、はがれて落ちる。
皮脂膜がはがれたら何が出るんだろう?それは、皮脂膜のすぐ下の層「角質層(かくしつそう)」。
皮脂膜や角質層など、皮膚の表面にある部分には、死んだ細胞が押し出されている。
垢(あか)もここから出るんだね。
死んだ細胞はスポンジのような状態だから、水分をふくみやすいんだ。
でも、死んだ細胞の下、つまり角質層の下にある部分からは、水をふくみにくいよ。
上は水をふくむのに、下は水をふくまない。この違いがあるから、上だけがふくらんでひきつったようになる。これが、おふろに入ると指がシワシワに見える理由だよ。
ちなみに、おなかやうでにだって角質層はあるのに、どうしてシワシワに見えないんだろう?
それは、角質層がうすいから。水は吸収(きゅうしゅう)しているんだけど、シワシワが目立たないんだね。
<仮説②の解説>
神経がない人は、指がシワシワにならない
次に「神経が指をシワシワにしている」ことは、どうしてわかってきたんだろう?
それは、最新の研究から「ある神経がなくなってしまった人は、指がシワシワにならない」ことがわかったからだよ。
2022年、研究の結果を紹介する「Neurology」という本に、48歳の女性の話がのせられた。
その女性は「正中神経」という腕から指まで通っている大事な神経が働かなくなる病気になってしまったんだ。
この女性は角質層はあるのに、水に指をつけてもシワシワにならなくなっていたよ。
このことから、「指をシワシワにしているのは、神経なのかな?」と考えられるようになったんだ。
<仮説③の解説>
ぬれた指足で物をつかめると、生き残れる
次に、どうして「シワシワになることができた人間だけが、生き残れたのでは?」と言われるようになってきたのだろう。
それは、最新の研究から「指がシワシワになっていた方が、ぬれた物がつかみやすい」ということがわかったからだよ。
また、今存在している生き物たちは、みんな「生き残りやすい特徴(とくちょう)をもった生物だけが、勝ち残った」とされているから。この考えは「自然選択(しぜんせんたく)」って言うよ。
2023年、イギリスのニューカッスル大学(Newcastle University)の研究者たちが「指がシワシワになっている人となっていない人、どちらがぬれた物を運ぶのが速いか?」実験してみたんだ。
具体的には、親指と人さし指だけを使って、ぬれたガラス玉を別の容器にうつす作業をしてもらった。
すると、指がシワシワになっている人たちの方が、速くガラス玉を運ぶことができたんだ。
よく考えると、車のタイヤにもみぞがあるよね?あれは、道路をしっかりつかむため。
指にもシワがあった方が、ものをしっかりつかみやすいんだね。
<仮説④の解説>
「シワシワの原因はお湯が体に入ってきているから」がまちがっていると考えられる理由
最後に、どうして「指がシワシワになる原因は、体にお湯が入ってきているから」というのはちがうと言われるようになったのだろう?
それは「もしこれ(浸透圧)が原因なら、全身がシワシワでパンパンになるはず」だから。
おふろにつかった後、指や足のうら以外もシワシワになっていたかな?
なっていなかったはず!
浸透圧でお湯が体に入ってきてシワシワになるなら、おなかやうでもシワシワになっているはずだよね。
それに、体にお湯がドンドン入ってきたら、パンパンにふくらむんじゃないかな?
全身はシワシワにならないし、パンパンにもふくらまないから、浸透圧はシワシワの原因ではなさそうだよね。
まとめ:3つの有力な説
というわけで、おふろで指がシワシワになるのは
(1)皮膚の一番外側だけが、水を吸収するから
(2)神経が、指をシワシワにしようとしているから
(3)ぬれた指足でも、物がつかみやすくなるから
という3つの理由が考えられているよ。
それをうらづける研究もみてきたね。
でも、これらが本当の理由かは、まだ完全にはわかっていないんだ。
1つだけが正しいのか、全部正しいのか?
本当に数少ない研究だけで、証明できたと言っていいのか?
まだまだたくさんの人たちが、「なぜ?」を知りたくて、いろいろ調べたり、研究したりしているよ。
みんなも普段の生活の中で、知りたい「なぜ?」が出てきたら、ぜひ調べてみてね。
例えば、今日の話に関係することだと
・シワシワになりにくい人と、なりやすい人はいるのかな?
・ずっとおふろに入り続けたら、おなかもシワシワになるのかな?
などなど。なぜ?を調べ続けると、立派な科学者になれるかも!?
(上記すべて参照:2023-07-02)
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