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世の中には、たくさんの“理系シゴト”があります。でも、就活ではついつい、メディアなどでよく見かける企業や仕事にばかり目が向きがちではありませんか? やりがいと誇りを持って働ける職場は、想像以上にたくさんあります。身近な製品の開発から、縁の下の力持ちまで、役割もさまざま。実際に現場で活躍する方たちのお話から、そんな“理系の選択肢”を見つけていきましょう。
Vol.1は、精工化学株式会社の研究開発部で働く小澤達也さん(仮名・入社3年目)のインタビューです。
(※所属などはすべて掲載当時の情報です。)
精工化学株式会社
ゴム用薬品や重合抑制剤などを製造・販売する化学薬品メーカー。1946年創業。開発された薬品は、タイヤやベルト、ホースから輪ゴムに至るまでの幅広いゴム製品や、粘着剤、接着剤、塗料、インキ、繊維、樹脂製品など数多くの化成品に使用されている。扱う化学薬品は“調味料”的な役割で、メインの材料ではなくとも、あらゆる製品を完成させるために必要不可欠な存在。特殊性の高い薬品を多く手がける“ニッチトップ企業”として、日本のモノづくりを支えている。
http://www.seiko-chem.co.jp/
有機金属化学の研究から、ゴムという未知の世界へ
私は大学院までの6年間化学を学び、特に後半3年間は有機金属化学を専攻していました。有機化学と無機化学の両方を扱う分野で、フラスコを触りながら実験をする毎日。学んだことを活かしたくて、化学系の職種に絞って就職活動をしました。ただ、前半は就活があまりうまく進まず……それでも化学のジャンル内で多くの選択肢に目を向けて、あらゆるメーカーにエントリーした結果、最終的に半導体関係の大きな会社と精工化学から内々定をいただいたんです。事業規模などで迷いはしましたが、ゴムの老化防止剤を製造する事業内容に興味を持ち、精工化学を選びました。当時はゴムの成分すらよく知らなかったけれど、身近なところでいろいろなものに使用されている素材だから、純粋に興味が湧いたんです。薬品の合成をする職種があるのも、楽しそうだと感じました。ひとつの職場で長く働くことが理想だったので、創業から70年以上経つ、歴史ある会社というのも決め手になりましたね。
現在は、研究開発部に所属し、当社で合成した薬品(試作品)をゴムに混ぜて実験・評価する仕事を主に担当しています。大学での研究分野からは遠い内容だけど、実験の進め方などは経験が活きる場面も少なくありません。事前調査から始めて、実験をして、データを解析し報告書にまとめる。そういった実験の基礎は、学生時代真剣に研究に取り組んだからこそ身に付いたものだと思う。だからこそ、未知の世界だったゴムの分野でも、なんとかやっていけているんじゃないかと思っています。
ニッチな業界で、身近な素材の可能性を拡げる
私が担当している業務内容は、大きく分けると2つです。
まずは、ゴムに新しい機能を付加する添加剤の開発。たとえば、接着しない材料が接着するようになったり、滑らない材料が滑るようになったり、などこれまでにない機能を付与できるような開発をしています。そんな大小さまざまのテーマを扱って、ゴム薬の可能性を広げていくわけです。ときにはなかなかうまくいかない実験もあって……。最近だと、摩擦を調べる実験を一歩進めるのに、2ヵ月くらいかかりました。JISで定められた評価法がなかったため、自分で試行錯誤を重ねて実験を繰り返したんです。なんとか良い結果を出せたときは、達成感があって、とてもうれしかったですね。
もうひとつは、既存ゴム薬の新たな使い道を見出す仕事です。ゴムの酸化を防止する薬を、ゴムではなく油に入れてみたら、どれだけ酸化を抑えられるか? というように、さまざまなテーマに基づいた実験をして、データを集めるんです。テーマは社内で挙がるほかに、顧客からリクエストを受けることも。大学院での研究は理学色が強かったため、開発よりの仕事をしたいと思っていた私としては、顧客からの多種多様なニーズに応えることで実社会の役に立っている実感も湧きますね。
物質をゴムに混ぜるときの配合を考えるところから、ゴムを練って実験・評価して、結果の考察まで、一連の流れをすべて自分でできるのも、当社ならでは。そのぶん責任もあるけれど、同時にやりがいを感じています。
ゴム薬の開発は、とてもニッチな業界です。だからこそ国内シェアも高く、自動車で使用されるゴム部品には、精工化学の薬品が使われているんです。日光や摩擦によるゴムの劣化を防ぐために、当社のゴム薬が役立っています。身近なところでさまざまに使われている製品に携われるなんて、とても大切な仕事をさせてもらっていると思います。
私はまだ、自分で手がけたものを製品化したことがないので、早く製品化の喜びを味わってみたいですね。そのためにも、いまはひとつひとつの仕事を着実に進めていくことを常に心がけています。そうすることで、データの見方ひとつとっても、たくさんの気づきを得られるんです。また、実験の仕事には、数を重ねてこそ掴めてくる感覚も少なくありません。上司に話を聞くと、経験の多さからあらゆる角度で意見をもらえるので、私もひとつひとつの経験を自分のものにして、知識や技術の引き出しを増やしていけたらと思っています。
就活生へのメッセージ
私が就活を乗り越えられたのは、まず、研究を真剣に頑張っていたからです。序盤は就活がうまくいかなくて、途中で履歴書をすべて書き直したりもしましたが、実験の成果が出始めると、自分にも自信が持てるようになったんです。そして面接でも、研究について強気でアピールできるようになりました。そのころから、就活の手応えが変わってきたと思います。 理系の学生なら、誰もが何らかのテーマを持って、研究に取り組んでいるはずです。その経験を、ぜひ、胸を張って堂々とアピールしていってください。そうすれば、想いはきっと伝わります。
もうひとつの大きい理由は、視野を広げたことです。専門分野から少し外れても、面白そうな内容を広く探していった結果、とてもやりがいのある仕事に出会えました。興味のおもむくまま、柔軟に飛び込んでいけば、活躍できる場所はきっと見つかるはず。いい選択肢に出会えるよう、応援しています!
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リケラボ編集部より
身の周りのあらゆるものに使われているゴムには、精工化学という“ニッチトップ企業”の存在があったのですね。まさに縁の下の力持ちとして日本のモノづくりを支える、理系シゴトの一面を垣間見ることができました。視野を広げてこんなに素敵な仕事と出会った小澤さん。充実した毎日が伝わってくるインタビューでした。
また、就活では学生時代に取り組んできた研究に自信を持つことが大切、という力強いメッセージもいただきました。思ったような研究成果が出ていないという人も大丈夫。結果ではなく、どのような想いで試行錯誤してきたのか、具体的事例を交えながら根拠をもって語ることが大切なのですね。ぜひ、みなさんも小澤さんのようにやりがいのある理系シゴトに出会えますように。引き続き、就活頑張ってください!
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