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私たちが日ごろ口にするあらゆる料理は、さまざまな化学反応によって生まれています。調理とは科学であり、レシピとはある料理を再現するための“実験手順書”でもあるのです。
今回ご紹介する「理系すぎるお料理レシピ」は、「スポンジケーキ」。ふんわりときめ細やかで、口どけのよい仕上がりにするためには、材料がもつ特性を理解することが大切です。どこまでついてこられるかで、あなたの理系度も診断できるかも!?
ふんわりときめ細かく口どけのよいスポンジケーキの再現方法とその考察
目的
きめ細かくやわらかなスポンジケーキを作る。
方法
〈材料〉(直径18cmの丸型を使用)
- 薄力粉(3回ふるっておく) 90g
- 砂糖 90g
- 卵(常温に戻しておく) 3個(150g)
- 牛乳 30ml
- 無塩バター(湯せんで溶かしておく) 30g
- クッキングシート
- 無塩バター(クッキングシートに塗る用)
- ホイップクリーム 好みの量
〈調理法〉
- ボウルに卵を割り入れ、よくほぐす。
- 砂糖を3回に分けて加え、混合して溶かす。
- 強く撹拌して白っぽくなるまで泡立てる。このとき、電動ハンドミキサーを使用することが望ましい。
- 全体がきめ細かく泡立ち、ハンドミキサーから落ちた生地が盛り上がるくらいの固さになったら、薄力粉を少量ずつ加えてゴムベラで切るように混合する。
- バターと牛乳を生地に加え、手早く混合する。
- クッキングシートを敷き、溶かしたバターを塗っておいた型に生地を流し入れる。このとき、表面に気泡が発生している場合は取り除いておく。
- 160℃のオーブンで30分~35分焼く。
- 竹串を刺して焼き上がったことを確認したら、オーブンから取り出す。
- あら熱が取れたら型から外す。
- 好みでホイップクリームなどと一緒に盛り付ける。
結果
ふんわりとしたおいしいスポンジケーキが完成した。
ポイント/考察
スポンジケーキは、卵の起泡性を活用した調理によって作られる。卵に含まれるタンパク質には界面活性作用があり、表面張力を低下させる働きをもつ。さらに、空気に触れることで膜状に構造が変化するため、きめ細やかな泡が保たれるのだ。
このとき温度が高いほうが、表面張力が低下し起泡性が高まるため、しっかりと卵を常温にしておく必要がある。冬場など寒い時期は、砂糖を加えてから湯せんにかけ、30~40℃ほどの温度を保ちながら撹拌するとよい。
薄力粉には、気泡をコーティングして泡がしぼむのを防ぐ役割がある。薄力粉の中のでんぷんが水分を含み、気泡を包み込んだ状態で生地が凝固するため、空気を含んだまま焼きあがりふんわりとした食感に仕上がる。そのため、薄力粉を混ぜ込むときは泡を潰さないよう混ぜ過ぎに注意しながらも、しっかりと生地全体に粉を行き渡らせて、気泡をコーティングすることが重要である。
また、バターを最後に加えたのはバターの油脂に消泡作用があるためだ。よって、すぐに焼き始めることができるよう最後にバターを加え、手早く混ぜる方法をとっている。同じ理由で、卵を使った製菓の際に調理器具が汚れていて油分が付着していると、泡立ちが悪くなる恐れがある。つまり、清潔な調理器具を使用することが大切である。
結論として、きめ細かくふんわりとしたスポンジケーキを再現するには
- 卵を常温に戻し起泡性を十分に発揮させること
- 薄力粉を加える際は気泡を潰さないよう注意しながらしっかりと均等に混ぜ合わせること
- 油脂による消泡作用の影響を最低限に抑えるため、調理器具は清潔に保ち、バターを最後に加えること
が重要である。
理系・文系を問わずレシピに潜む科学現象を理解することで、料理の腕もさらに上達するはず。お菓子作りの定番ともいえるスポンジケーキにも、材料がもつさまざまな特性が活かされているのでした。では、次回もお楽しみに!
フローチャート作成参考:
『応用自在な調理の基礎 フローチャートによる系統的実習書 日本料理編』
河内一行ほか/家政教育社
(記事監修/管理栄養士 棚橋伸子)