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理系就活│応募企業の選び方

「応募企業はどうやって選べばいいですか。いい企業の見つけ方を教えてください。」:理系就活Q&A 第2回

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こんにちは。サインキャリアデザイン研究所の篠原です。フリーランスのキャリアコンサルタント(国家資格)として学生向けのキャリア支援を行っており、理系大学を含む複数の大学でキャリア科目・就職支援講師として活動しています。人材業界でも17年間、企業の新卒採用支援や自社の採用業務、新入社員の教育担当などを行っていましたので、採用企業が新入社員に求めているもの、新入社員が会社に求めているもの両方を知っていることを強みとしています。

ある理系大学では長年にわたって、多くの学生の皆さんの就職活動における迷い、悩み、頑張りに触れてきました。また企業の方たちと協力して理系向け就職セミナーや、技術職社員の方たちとの座談会などの運営経験もあります。そうした活動を通じて実感してきたのは、就職活動という場そのものが、学生さんそれぞれの気付きや見直し、成長のステージになり、いかにそこから逃げずに向き合っていくことが大切であるかということです。

このシリーズでは、そんなこれまでの実際の先輩たちの就職活動における成功や失敗の事例も多く取り上げながら、よりリアルに理系の就職活動の進め方をイメージしていただける記事を発信できればと考えています。

今回は、企業をどうやって見つけるか、というお悩みについてお答えしていきましょう!

理系なので、大学を選ぶ段階から既にやりたいことも志望業界もある程度決まっていました。ですが、先輩たちのいろいろな就職先を知るたびに本当に今考えている進路で正解なのか不安になってきました。企業はどうやって見つけていけばいいのでしょうか?

みんなは何社くらい受けている?

就職活動における学生の平均エントリー社数は、主要な就職ナビサイト各社の調査によると平均20社前後といわれます。またそれら就職ナビサイトへの掲載社数は最大規模で1サイト26,000社ほど。そのような社数から、まずは20社前後のエントリーを行うところから3月の本選考が始まります。もちろん先行して行われるインターンシップや、インターンシップ経由の早期選考、本選考落ちからのリスタートなども含めると、就職活動期間中にエントリーや応募する企業数はもっと多くなります。多くの候補企業への応募を並行して進めていくのが新卒の就職活動の特徴だといえます。

ところで、いまの就職環境は恵まれているのでしょうか?それをうかがい知る指標として、毎年リクルートワークス研究所が発表している「大卒求人倍率」を見てみましょう。大卒求人倍率とは企業の求人総数÷企業就職希望学生数であり、1倍を超えると学生数以上の求人数があるということを示します。そして2023年卒の大卒求人倍率は以下のように発表されました。

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2022年4月リクルートワークス研究所発表「大卒求人倍率調査(2023年卒)」をもとに著者作成


この数字から、コロナ禍においても企業の新卒採用意欲は旺盛であり、学生の1.58倍の求人数があるということが読み取れます。一方で、従業員規模別でみれば、従業員5,000人以上の企業の0.37倍は、ここ10数年のなかでも最も低く、学生の大手志向がより高まっている傾向が分かってきます。

企業探しもまずは「知ること」をスタートラインに

大手企業に学生の応募が集中する背景には、大手ゆえの安定感や安心感、しっかり整理された待遇面などに対する期待もあると思いますが、2023年卒においてその傾向がより顕著になったのには、コロナ禍特有の背景もあるように思います。

コロナ禍での学生生活において、多くの学生が日頃の行動を制限され、これまで以上に社会との関わりの機会が減ることで、さまざまな新しいことを知る機会も限られてきました。その結果として、就職活動において応募先として思い浮かぶ企業の幅も、例年以上に狭くなり、誰しもが知っているような企業に集中しているように思います。

第1回の自己分析に関する記事でも「知ること」の大切さに触れましたが、企業探しにおいて思いつく選択肢は、自分が今現在知っている範囲のイメージだといえます。「自分は十分な情報収集をした上でこの業界や企業を志望するに至った」という人はそれでいいと思います。しかし、今知っている企業名を挙げると2030社程度くらいが限界だ、という人は、たった1社の新卒入社企業を悔いなく探すためにも、まずは知ることに時間をかけてみることをお勧めします。そこで、ここから先は、企業探しの視点を紹介していきたいと思います。

これからの社会に可能性を持つ企業を見つける

前回の自己分析に関する記事では、社会の流れに関心を持つことの大切さにも触れました。例えば、今の社会において以下のトピックは注視する必要があると思います。

①新型コロナによる影響と新しい日常
②少子高齢化/人口減少化社会の展望
③ロシア・ウクライナ情勢の日本への影響
④SDGs等、持続可能な社会への取り組み
⑤AI・IoT・DX…デジタル技術の進展と成長

これらの流れの中で、新たに生まれ、成長を続ける産業や企業もあれば、逆に今後の転換を迫られている産業や企業もあります。日常生活の中でも、コンビニやスーパーでのレジが急速に自動化されている実感がある方も多いのではないでしょうか?これはDXの進展という見方もできますし、新型コロナによって非接触技術のニーズが急速に高まった結果であるとも考えられます。今後の労働人口の減少を見据えた施策ともいえるでしょう。

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時代の大きな変換期でもあるともいえる現代、例えば皆さんの企業選びも「子供の頃からの憧れだったから」という動機などは現実的ではなくなってくるかもしれません。子どもの頃、今、そして将来と考えた時に、社会は随分と変わってきていることを認識しておきたいですね。ぜひ、企業選びの新たな視点の一つとして、これからの社会の流れをつかみ、その流れのなかで可能性を持つ企業を見つけることをお勧めしたいです。

「職種名検索」してますか?

最近大学で、ある情報系の学生との面談でやり取りした話を紹介します。本人は大学でプログラミングを学んでいたので、大手IT企業を中心に受けていました。それでもなかなか結果が出ずに相談に来てくれたという経緯でした。

その学生に、やりたい仕事は何かと聞いたところ「SE(システムエンジニア)やPG(プログラマー)」だということでした。そこで就職ナビサイトでSEPGで職種検索をしたことがあるかを聞いたところ、「ない」ということでしたので、その場で企業を一緒に調べてみることにしました。ある就職ナビサイトの業界検索でIT企業を探すと約1,500社見つかりました。次に職種検索でSEPGを募集している企業を探すと、なんと、約4,000社見つかりました。

さて、この数字の差は何でしょうか?それはIT企業以外でSEPGを募集している企業が約2,500社あるということです。その学生は、そこで初めてメーカーや商社などで「社内SE」という職種があることを知りました。以来、社内SEに興味を持ち、最終的には食品商社の社内SEとして内定を決めることができました。

ちなみに、私も前職は就職ナビサイトの営業として製薬会社や化学メーカーなどを担当していましたが、いつも採用担当者から聞いていたのは「機電系の学生採用に困っている」ということでした。業界イメージ的に機械・電気系の学生が目を向けてくれないという悩みを持っていたわけです。しかし、実際には生産設備があるそれらの企業には、生産技術等の技術職として機械・電気系の学生採用は不可欠だったのです。他にも、コンビニ経営企業が店舗設計事業の一員として、建築系の学生を募集していたこともあります。

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化学・農学・生物系の職種の幅も広がっている

他にも、化学、農学、生物系の学生さんとの話のなかで、化学、素材、製薬、食品など一部業界しか応募先が見つからないという相談を受けます。しかし、昨今は「SDGs」が社会のトレンドワードの一つにもなっているように、化学、農学、生物分野に関連する、エコで持続可能な社会を実現するための取り組みを推進する企業が増えています。また農業とテクノロジーをかけ合わせた「アグリテック(AgriTech)」も注目を集めています。例えば、農学部で作物の生産効率の研究をしていた学生が、アグリテックのシステム開発に力を入れるIT企業に就職を決めたケースもあります。このように、化学・農学・生物系学生の就職先として、SDGs関連やアグリテック、そして農業、林業、水産業、畜産業などの第一次産業でも活躍の場が広がっています。これは、この分野の専攻ならではの傾向です。

もしも自身の専攻を活かす就職先として、一部業界での基礎研究、応用研究、品質管理などの職種に限定されたイメージしか持っていなかったとしたら、就職ナビサイトなどでのフリーワード検索で自分の学部や学科名を入力して検索してみることをお勧めします。それによって、同じ専攻の先輩が思わぬ業界や企業、職種で活躍しているという紹介記事など、新たな発見もあるかと思います。他にも、[アグリテック][化学 持続可能][食 SDGs]など、関心のあるトレンドワードや、複数の関連ワードの組み合わせで、どのような企業が表示されるか試してみるのもお勧めです。

「応用」という視点が理系就活の可能性を広げる

理系の就職活動で文系以上に注目されるのが、研究活動です。今実際に取り組んでいる人も、これから卒業研究に向けて計画を立てている人もいると思いますが、その研究内容を直接、志望企業に活かすことができるかといえば、必ずしもそうともいえないのが一般的です。

では研究が就職活動に活かせないのかというと、全くそんなことはありません。これまでの先輩たちや採用する企業側、それぞれが意識してきたのが「その研究をどのように応用できるか」ということです。これは研究だけに限った話ではありません。研究を通して、あるいは学生生活でこれまで学んできたこと、身に付けてきた知識や技術は、志望企業や志望職種で働く時にどう応用できそうか?と考えることは、自分の可能性を広げる意味でとても重要です。

以前、ある電気系の学生がいました。就職活動スタート時には、電力会社や自動車メーカーなどへの就職も考えていたようですが、最終的に採用されたのは、私立大学の事務職員でした。一見、関係ない職種への就職に見えますが、その方は今、その大学の施設や設備などの保守管理、設計計画などの業務に就き、学生時代の専攻を活かした仕事をしています。このケースも、職種という視点で検索を行い、自分の専攻内容の「応用」という視点で可能性を広げることで出会えた就職先だといえるでしょう。

皆さんも、社会に目を向け、職種を軸に、これまで気づいていなかった活躍の場を見つけてみましょう。

よりよい選択肢が見つかることを応援しています!

※記事内の画像はすべて著者作成

篠原功治

篠原功治

キャリアコンサルタント
サインキャリアデザイン研究所代表・国家資格キャリアコンサルタント・JCDA 日本キャリア開発協会会員
2009年に学生・若年者を対象としたキャリア支援活動を事業とするサインキャリアデザイン研究所を立ち上げる。理系向け就職セミナーや技術職社員との座談会・パネルディスカッションをはじめとする理系大学生向けのキャリア支援にも長年携わっており、現在は大学でのキャリアデザイン科目・就職支援プログラム講師、企業・就職支援機関とコラボレーションした学生向けキャリア・就職支援プログラムの企画・実施、企業における営業研修などを務める。

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