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「理系+αで広げる・広がるキャリア」、1回目の英語に引き続き、第2回目は、コミュニケーションを取り上げます。人とコミュニケーションを取るのが苦手だと感じている方、一人で集中して業務に取り組む事が好きな方、コミュニケーションをそれほど重要だと思ってない方など、さまざまな方がいらっしゃるかと思います。今回は、一般的なコミュニケーション力というよりも、理系人材に必要と思われるスキルに焦点を当ててお話したいと思います。
理系人材にも求められるコミュニケーション力。仕事で使う場面はこんなにある!
はじめに、理系社会人として、どのような時にコミュニケーションに気をつけるべきか、いくつかの場面をご紹介します。
理系研究職の場合、実験・解析などを一人で行う時間は長いですし、営業職に比べれば、コミュニケーション力を必要とする機会は少ないでしょう。しかし、研究・開発職の場合でも以下のように、さまざまな場面でコミュニケーション力は必要となります。
- 仕事の進捗報告
- グループ内の議論
- 成果発表
- 他社・他部門への業務依頼
ひとつずつ、見ていきましょう。
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仕事の進捗報告
定期的な進捗報告の場合、口頭で端的に分かりやすく説明することが求められますので、時間配分・内容など、事前に準備してから参加しましょう。コミュニケーション力を鍛えるのは日々の鍛錬ですから、定期ミーティングは非常に良い機会になると思います。
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グループ内の議論
研究・製品開発の場合、問題をどう解決するか、どうやってスケジュールを守るかなど、深刻な場面もあるかもしれません。どうしても結論は1か2しかないと思う時でも、第3の案があるかもしれません。重要なのは、自分の思い込みをなくし、相手の意見をすぐに否定しないことです。参加者の発想を自由にすることで、新しいアイデアが生まれる可能性が高まります。
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成果発表
事前に資料を作成することが多いと思いますが、その資料はオーディエンス(上層部向けかグループ向けか)に合わせているか、理解してもらえるか、興味を持ってもらえるか、などがポイントになります。営業職の方は、会社でプレゼンテーションのトレーニングを受ける機会があるかもしれませんが、理系人材の場合、無いことが多いでしょう(私もありませんでした)。
自分の場合、転職後たまたまマーケティング職につき、40歳過ぎて初めてプレゼンテーションのトレーニングを受けました。自分の発表動画を見返すのは恥ずかしいですが、改善点は明確になりました。高額な講習を受けなくても、ご自分で発表している姿を動画に取って見返すだけでも、効果があります。
第1回目の英語力の記事でも記載した通り、コミュニケーションも日々の訓練です。発表することが苦手な方こそ、コミュニケーションやプレゼンテーションのトレーニングをお勧めします。プレゼン上達の本やWEB講習などをいくつか参照してみるのもおすすめです。
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他社・他部門への業務依頼
リーダーとなり部下に業務を依頼する、他部門に評価業務を依頼するなどの機会は、理系人材には多いかと思います。例えば、評価などを依頼する場合には、背景をきちんと説明します。プロジェクト名や、なぜその評価が必要か、その業務の重要性などです。効率性の観点で言うと、説明時間は短い方がいいと思いがちですが、背景を説明することで、返ってくるアウトプットの質は格段に高くなります。
思い当たる?理系にありがちな癖/理系人材によくあるコミュニケーションの癖
どのようにそのスキルを身に着ければよいか
ここからは、私の経験も含め、理系人材によくあるコミュニケーションの癖と、改善方法を説明します。
(1)コミュニケーションを軽視しない
理系人材は一般的にヒトよりモノに興味があり、開発した製品によって自分は認められると考える人が多い傾向にあります。自分も開発部のころ、仕事の成果は製品そのものであり、「こんなことを説明しなくても分かるだろう」とコミュニケーションを軽視していました。
また普段から仕事の効率性を重視しているため、コミュニケーションでも効率化を図ります。会話を遮って「つまりこういうことですかね」と結論を急ぐ、背景を説明せずにメンバーに仕事を依頼するなどです。しかし、コミュニケーションとは感情や意思、情報を相手と伝え合うことです。話している途中で結論だけ言われる、背景なしに依頼内容だけ説明されれば、相手はどう思うでしょうか。
今後、皆さんがプロジェクトのリーダーとなった場合には、部下との会話をはじめ、他部署との調整・交渉など、多くのコミュニケーションに時間を費やすことになります。様々なメンバーと信頼関係を築くためには、時間をかけたコミュニケーションが求められるでしょう。
あなたにとっては当たり前だと思っていることが、他の方には馴染みのない、初めての内容かもしれません。ぜひ、ご自身の普段のコミュニケーションについて振り返ってみてください。
(2)コミュニケーションは双方向のものである
これも理系人材で当てはまる方が少なくない気がしますが、自分の好きな話題・得意な分野だと一方的に話す方がいます。話す相手がその話題に興味があるか、理解しているかを気にせず、こちらが質問する隙すら与えないのです。大学の友人など親しい関係であれば問題ないですが、仕事の場では、相手の様子を確認しながらコミュニケーションすることが必要です。
一方的なコミュニケーションは、聞いている側に1.質問する隙がなく内容を理解できない、2.話が長くどこが重要か分からない、といった問題を生み出します。また、就活・転職の面接では、質問の回答が長すぎると、コミュニケーション能力に問題があるとみなされ、致命的な減点になる可能性があります。
改善方法ですが、対面であれば、こちらが話している間、相手の様子をよく見るようにしましょう。相手がうなずいているかなど理解度を確認する、途中で、「ここまで何か質問ありますか?」とか、「質問の回答になっていますか?」など、相手を気遣うコメントを入れます。
オンライン会議でも同じように、一方的に話さずに上記のコメントを入れます。会議の雰囲気が柔らかい感じになり、聞く側も質問がしやすくなるでしょう。
(3)相手のバックグランドを意識する
理系の場合、大学・大学院・社会人と進む中で、同じ専門分野の友人・同僚とのコミュニケーションが多いため、専門用語のみの会話となりがちです。もちろん、相手が同じ専門分野を理解していれば良いですが、そうではないと、あなたが何を話しているのか理解されません。以下に私の体験を話します。
以前、半導体設計から化学系会社への転職する際の面接で、経歴書に記載した「ミックスドシグナル製品」とは何ですかという質問をされました。一般的に電子回路設計はアナログ設計とデジタル設計の分野に分かれており、ミックスドシグナル製品というのは、アナログ・デジタル混在の半導体製品という意味です。自分としては、20年近く使っている当たり前の用語を経歴書に書いていたつもりでしたが、他分野の方には全く通じないことが分かりました。
逆に、化学系会社に転職した際は、周りの化学出身の同僚は、自分たちの話が化学専攻以外の人にはほとんど理解できないということをあまり認識していませんでした。高校の参考書を取り出して化学の基本を勉強しなおしキャッチアップに努めましたが、自分が当たり前だと使っている用語は、他の分野、他の会社の方には全く意味が通じないことも多いですし、その逆も然りです。
以上は少し極端なケースですが、同じ会社で働いていても、専門分野が異なる場合や営業部門と会話する時、研究結果を発表するなど、相手の立場や知識に合わせた内容・用語を意識することが重要です。
改善方法ですが、会社であれば部署の異なる同期と仕事の話をするとか、他業界の友人と話すのも良いでしょう。可能であれば、上層部や他部門に仕事の成果を発表するなども、良い勉強になります。限られた時間の中で、内容を絞り、分かりやすい表現にするための工夫をし、さらにそれを他者からフィードバックしてもらうことで、異なるバックグラウンドの方とのコミュニケーションが格段にスムーズになります。
(4)相手の話をよく聞く
コミュニケーション能力が高い人というと話し上手な人というイメージを持ちがちですが、上記で説明してきた通り、自分が話したい内容だけを一方的に話す人は、コミュニケーション能力が高いとは言えないでしょう。理系であれ、文系であれ、仕事をする中で信頼できる人とは、実はこちらの話をよく聞き、内容を正しく理解してくれる人ではないでしょうか。
また、リーダー職につく・部下を持つようになると「聞くスキル」というのが、非常に重要になります。最近は部下と定期的に1on1ミーティングを実施する会社も多くなり、いきなり何を話せばいいのか戸惑うこともあると思います。
コミュニケーション手法として代表的なものに、ティーチング(解決策を指示)、コーチング(解決策を考えさせるよう質問する)、カウンセリング(相手に共感・受容する)などがありますが、本格的に資格を取らなくても、本を読むだけでも参考になると思います。私が最近読んだのは、「コーチングよりも大切なカウンセリングの技術(小倉広著)」ですが、部下と上司が話し合う具体的な場面が多く出ており、参考になるかと思います。
私の場合、キャリアコンサルタントの資格を取る際に、相談者の話を傾聴するトレーニングを受講しました。相手の話に耳を傾け、表情や声のトーンまで注意を払い、相手の気持ちに寄り添いながら聴くので、難しい技術ですがとても良い経験でした。キャリアコンサルタントの仕事としてこのようなスキルは必須ですが、職場や家族との対話でも、相手の話をよく聞くことで、コミュニケーションが格段に良くなります。
そんなに難しく考えなくても、とにかくこの時間は相手の話をじっくり聞こうと意識すれば、相手はどんどん話しますので、皆さんぜひトライしてみてください。
コミュニケーション力を生かして広がるキャリアとは?
コミュニケーション能力が高い理系人材は、希少性が高く、さまざまなキャリアがひろがります。
まずは、マネジメントに進むという道です。既に説明した通り、製品開発では多くのメンバーが協業して行うため、全体を管理しかつ技術にも明るい人材が必要となります。
理系のマネジメント業務は、技術を理解し、プロジェクトを管理し、他部門との調整も行い、人材育成まで行い、さらにプレイングマネージャーである事も多いかもしれません。ほとんどが他者とのコミュニケーションが必要ですので、多くの時間をそこに割くことになります。大変な業務なのですが、それぞれのバランスを上手くとれれば、非常に付加価値が高い人材といえるでしょう。
続いて、技術をベースとして、営業・マーケティング・品質など顧客対応に近いポジションがあります。私の場合、20年間半導体設計に従事した後、マーケティング・技術営業の道に進みました。お客様含め関係者との長期的な信頼関係を構築する仕事は、自分にとっては設計開発よりも合っており、大きなやりがいを感じています。自分の場合、“モノ”よりも実は“ヒト”に興味があったのですが、現在、開発業務をやられている方にも同じような方がいるかもしれません。
ただし、お客様と信頼関係を築けることも、設計開発で苦労してきたからこそ、開発者であるお客様の大変さ・技術的に心配な点を理解できるのだと感じており、20年間やってきた開発業務は無駄ではなく、今の仕事に活きていると思っています。
まとめ
以上、理系によくある思い込みや癖を中心にコミュニケーションについてお話しました。一般的なコミュニケーションの本に出てくるような「大きな声で話す」、「相手の目をきちんと見て話す」、「はきはきと話す」などは、面接対策としては必要ですが、理系人材が働く場面ではそれほど重要とは思いません。
もごもごと話したり、恥ずかしそうだったり、小さい声で聞き取りづらかったりする方は多くいらっしゃいますし、それは個性の一つと捉えていいと思います。話すスピードがゆっくりだったり、速かったり、高い声、低い声などと同じ事です。「話し方の技術」よりも、相手を理解しようとする・自分を理解してもらおうとする気持ちが、コミュニケーションにおいては最も重要です。そこを意識しながら、日々の業務でコミュニケーションを大切にしていくと、自分では思いもよらなかったキャリアが拓けることも少なくありません。
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