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科学を愛する読者のみなさま、ごきげんよう。くられです。
使える予算は1万円以内。「高価な実験機器は使えない」という制約のなかで知恵と工夫を凝らして実行可能なおもしろ実験を紹介する本企画。
第7回目の今回のお題は「お家で簡単、金メッキ」です。
家庭でも簡単に、金メッキができる
金といえば最も酸化されない金属として、またすなわち輝きを失わない金属として誰もが知る貴金属です。
たとえばこれが鉄や銀、銅といった金属であれば、加熱して溶かした状態だとすぐに大気中の酸素と結びつき酸化物を作ります。言いかえれば酸素と反応した無機化合物が表面を覆った状態になります。一般傾向として酸素と金属は親和性が高く、それが精細加工の障壁となってきたわけです。細い細い線を銅や鉄で作るのは地味に高い技術力が必要でした。
しかしながら金は高温だろうが常温だろうが低温だろうが酸素とまず反応しません。高校化学で「金は最も陽イオンになりにくい物質である」と習ったはずです。銀や銅は硫酸や塩酸にすぐに溶けてしまいますが「金と白金(プラチナ)だけは、濃塩酸と濃硝酸の混合酸である王水でしか溶けない」ということも教わったかもしれません(実際は条件次第で強塩基や過塩素酸などには溶けるのですが)。
異種金属で物品をコーティングする「メッキ」という技術においても、サビない金メッキの需要は特に高く、携帯電話をはじめパソコンの基板などで多く使われています。
工業の世界において金メッキを施す際に主に使われるのがシアン酸などで、いうなれば青酸カリに代表されるシアン化合物をガンガン使うという方法なので、おうちでやるにはさすがにちょっと危ないです。また、最近は電気を使わず触媒的な化学反応のみによって金属をメッキしていく「無電解めっき」などもありますが、時間と材料コストがかかる上職人的な技術が必要なので、これまたおうちでは難しい。
はてさて電気を使ったメッキで、かつ安全な方法はないものかと望まれていたところに近年、ヨードチンキに金が溶けるということを応用したメッキ方法が開発されて、じわじわと洗練されはじめています。本日はその方法を使った安全安心のおうちでできる金メッキの方法を紹介したいと思います。
安全な金メッキの方法
▼材料
・金箔:1,000円分もあればコイン1枚くらいをメッキできます
・ヨウ素液:通販サイトなどで購入可能
・鰐口クリップと電線:ホームセンターなどで
・太いシャーペンの芯:0.9mmくらいのものを
・アスコルビン酸:ビタミンC原末
・シャーレ:プラスチックでもガラスでも
・9V電池:四角い電池
・歯磨き粉または重曹:メッキ後の研磨に使います
金は三ヨウ化物イオンが存在している状態の液体にならだいたい何でも溶けます。
ヨウ素液がなくても、ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウム水溶液に結晶のヨウ素を溶かすなどでもヨウ素液の代わりに使うことができます。試薬の調達がめんどくさい人はヨウ素液か、ヨードチンキの原液などを使うと良いです。
金箔をヨウ素液に入れていくと、鰹節を熱湯にいれたようにじわじわシワシワと縮んでいって、そのあと溶けていきます。1分以内に溶けない場合はヨウ素イオンが少なすぎるので、ヨウ素を足すなどするといいでしょう。
金は三ヨウ化物イオンと反応し錯イオンとなったあと、AuI4^-のテトラヨウ化金錯体となります。
この錯体溶液はまだヨウ素液色のままですが、ここにアスコルビン酸を加えるとヨウ化物イオンが消費され、水溶液が透明になっていきます。
金はナノ金となりコロイド化していると言われており、この状態で電気的偏りを作ってやることで電析します。
方法としては、メッキしたいものを陰極に鰐口クリップで固定し、アスコルビン酸をいれた液中に投入。陽極は太めのシャーペンの芯などで電気を流します。電気は微弱でよいのですが、コインくらいのサイズをメッキしようと思うと9V電池か、アルカリ電池を3本くらい直列にしたものを使うといいでしょう。
2、3分メッキしたあと、すくい上げて歯磨き粉でこすり洗いをして研磨します。それを2、3回繰り返すと、だいたい金色のメッキが完了します。
以上、今回はヨウ素+電池でおうちでもできる金メッキについて紹介いたしました。
安全な方法とは言いましたが、実験の際には金の溶けた液やヨウ素液が目に入らないように念のため気をつけましょう。小さいお子さまとやる場合などには保護ゴーグルをかけるなど対策をするといいでしょう。
実験がうまくいったら今度はより分厚い金メッキに挑戦してみたりしてもよいと思います。重曹や歯磨き粉で磨いて定着させたあと、再度メッキを繰り返すことで分厚いメッキ加工が可能です。
ヨウ素液にヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムを溶かすことでより金の溶解度を上げることもできますので、いろいろ最適な濃度などを探ってみれば大発見が眠っているかもしれません!
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