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科学を愛する読者のみなさま、ごきげんよう。くられです。
使える予算は1万円以内。「高価な実験機器は使えない」という制約のなかで知恵と工夫を凝らして実行可能なおもしろ実験を紹介する本企画。
第9回目のお題は「石鹸ロウソク」です。今回は、私が主宰する秘密結社「薬理凶室」のメンバーであり化学に造詣の深いレイユール氏に協力のもと、お届けします。それではお楽しみください!
皆さんこんにちは。レイユールです。
ロウソクといえば元々は灯火具ですが、現在ではムード演出や燃やさずにインテリアとして活用されたりもしていますね。今回は、そんなロウソクをなんと石鹸から作ってみようと思います。
ロウソクの原料とは?
ロウソクには様々な種類があります。例えば、最もよく見られる白色のロウソクは「洋ロウソク」と呼ばれており、ロウの部分にはパラフィンワックスと呼ばれる石油由来の炭化水素が使われているのが一般的です。その他、伝統的な「和ロウソク」にはハゼの木から得られる植物油が使われており、海外の一部地域ではミツバチの巣から得られる蜜蝋を使って作られるものもあります。ひとくちにロウソクといってもその原料は多種多様に存在し、言い換えれば燃えやすくて固体であれば成分は限定されないということです。
石鹸ロウソクの作り方
原理を説明する前に、まずは実際に石鹸からロウソクを作ってみましょう。材料はいずれも市販品です。
・ロウを作る
まず、固形の石鹸約100gをおろし金を使ってすりおろします。おろし金が無い場合には、ケガに注意しつつ包丁やカッターナイフで刻んでも良いでしょう。
すりおろした石鹸をできるだけ泡立てないように熱湯に溶かします。その後、ダマが残らないように排水溝ネットなどで軽く濾しながら別の容器に移すとよいでしょう。最終的には石鹸全てを溶かし切って500~600mlの石鹸水を作ります。
こうして得た特濃の石鹸水を加熱しながら、ここにクエン酸の水溶液を加えていきます。石鹸の組成が不明(製品によってもマチマチ)なので、明確な分量は求められませんが、使った石鹸の重量の20%程が目安になります。今回は100gの石鹸を使ったので、20gを加えました。多少多い分には構いませんので、適当に加えながら様子を見て下さい。
クエン酸水溶液を十分に加えると、ボロボロと脂肪酸が分離してきます。これが一塊になるようにしばらく溶液を加熱します。泡立つようであればまだクエン酸が足りません。
全ての脂肪酸が一体化したら加熱をやめ、常温で放置しておきます。溶液が常温まで冷えると、脂肪酸はロウのように固まるので、これをピンセットなどで取り出し、小さな容器に入れます。
これを再び加熱して、数分沸騰させると、今度は、明確に2層に分かれてきます。上の層がロウで、下の層は水です。すなわち、熱いうちに上の層だけを別の容器に移せばロウが得られます。得られるロウの分量は、使った石鹸に対して50~70%程度です。(石鹸の種類やメーカー、操作法やクエン酸の量などで変動する)今回は、凡そ65gが得られましたので、65%です。
ロウソクを作る
先ほどまでの作業で得られたロウは、薄い黄色~白色の固体のはずです。これでは少し地味なので、ここからは色を付けて、ロウソクらしい姿に仕上げていきます。
まずは、ロウソクの芯を作ります。芯は、タコ糸が良いでしょう。ポリエステル糸など合成繊維系は炎の熱で融けてしまうので使えません。麻か綿から作られたものが最適です。
適当な長さにカットしたタコ糸を融けたロウに浸してぶら下げておくとロウが固まって芯ができあがります。
続いて、着色にはクレヨンを使います。クレヨン自体がロウに顔料を混ぜ込んだ製品なので、融けたロウと非常に相性が良いのです。
小さな容器にクレヨンを削り取ります。分量はお好みで調整してください。
ここに融けたロウを加えてよく混ぜます。
次に、適当な容器(ショットグラスなど)に、最初に作った芯を割りばしや竹串で中心に固定し、ここに着色したロウを流していきます。層を重ねる場合には、下層が固まってからにしましょう。
完全に凝固したら完成です。芯を適切な長さに切り揃えて点火してみましょう。
何故石鹸からロウが作れるのか?
今回、石鹸から取り出したロウは長鎖脂肪酸と呼ばれる成分の混合物です。通常、植物油脂にはこの長鎖脂肪酸がグリセリンとのエステルとして存在しています。エステルの状態では液体ですが、長鎖脂肪酸自体は固体の成分ばかりです。
つまり、エステルである植物油脂を一度加水分解により結合を断ってから遊離の脂肪酸に戻すと、常温で固体のロウのような成分が得られるのです。この植物油脂を一回分解することにより作られるのが正に石鹸であり、石鹸は脂肪酸のナトリウム塩なのです。脂肪酸塩に別の酸(今回はクエン酸)を加えることにより、脂肪酸を遊離酸の形に戻し、ロウのような物質を得たというわけです。
今回の実験にかかった費用
・石鹸:数百円
・おろし金:数百円
・クエン酸:数百円
・排水溝ネット:数百円
・タコ糸:数百円
・クレヨン:1色60円程度×4
・ショットグラス:数百円
・ビーカー(大):2000円程度
・ビーカー(中):500円程度
・ビーカー(小):500円程度
今回は、原料が安価だったので、複数個作っても予算には余裕があります。加熱に使う容器はできればちゃんとしたガラスメーカーのビーカーが望ましいですが、最近は小型のものであれば100円均一などでも入手は可能です。
掲載写真,図全てレイユール氏提供
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