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科学を愛する読者のみなさま、ごきげんよう。くられです。
使える予算は1万円以内。「高価な実験機器は使えない」という制約のなかで知恵と工夫を凝らして実行可能なおもしろ実験を紹介する本企画。
第19回目のお題は「化学反応で浮き上がる秘密インク」です。今回も、私が主宰する秘密結社「薬理凶室」のメンバーであり化学に造詣の深いレイユール氏の協力のもと、お届けします。それではお楽しみください!
皆さんこんにちは。レイユールです。
今回は、よく知られている「炙り出し」を化学の力でさらに進化させてみましょう。
炙り出しとは
「炙り出し」は皆さんも子供の頃に遊んだことがあるかもしれません。紙に果汁や野菜の搾り汁、または砂糖などの水溶液を使って文字や絵を描いて乾燥させた紙を火で炙ると、文字が焦げとして浮かび上がるというものです。
このような特定の操作を行わないと識字できない文字は、かつて秘密のメッセージを伝達する手段としても使われていたことが知られています。
以上がよく知られている炙り出しです。そこで今回はこの遊びを化学の力でもっとハイテクなものにしてみたいと思います。
炙り出しに使われるインク(これを「秘密インク」と呼びたいと思います)は、その種類も反応の原理もさまざまですが、今回は、特定の種類のガスに触れることで発色する秘密インクを作って「ガスで発色する炙り出し」を行なってみたいと思います。
ガスで発色するインク
※実験は専門家がドラフトチャンバーの内部で安全に注意して行っています。安易に真似をされないようお願いします。
ガスで発色する反応はすでにいくつかが知られています。最も有名なものとしては酢酸鉛という物質と硫化水素の反応でしょうか。
この紙に多少の湿気(反応を促進するため)と共に硫化水素を作用させます。すると、酢酸鉛と硫化水素が反応を起こして硫化鉛という物質が生じます。この物質は黒褐色をしているため、浮かび上がって文字として読み取ることができるようになるという仕組みです。
より安全に実験するには?
このようにガスで発色するインクとしてすでによく知られているものの大部分は、鉛化合物や硫化水素などの毒性の物質を使います。しかしながらより安全に実験できるよう、取り扱いが難しいこれらの化合物を使わずとも発色が起こるインクを考えてみました。
この化合物の溶液は酸性〜中性では無色透明なのに対し、塩基性になるとマゼンタに発色します。この性質を使ってガスで色が出るインクを作ってみましょう。
フェノールフタレインインクを作る
それでは、早速実験に取り掛かってみましょう。実験は汚れても良いような服装と机の上を古新聞などで養生するなどしてください。また、薬品はどれも高い毒性はありませんが口に入らないようにするのと、刺激性があるので換気には十分に注意してください。
1. エタノール10mlにフェノールフタレイン0.1gを溶かす。
2. この溶液をインクとして筆で筆記する(紙は小さな短冊状のものがよい)。
3. 十分に乾燥して文字が見えないことを確認する。
4. 霧吹きなどで少し水分を与える。
5. 適当な容器にアンモニア水(10%溶液)を入れる。
6. 紙をアンモニアが充満した容器に入れて発色させる。
うまくアンモニアが充満していればすぐに文字が浮き出ます。アンモニアが薄い場合には湯煎などで少し温めると揮発が早まります。
アンモニアガスは刺激が強いので換気に十分に注意して行ってください。
実験にかかった費用
・フェノールフタレイン(25g粉末)2,000−4,000円程度
・無水エタノール 1,500円程度
・アンモニア(10%溶液) 1,000円程度
・筆 500円程度
・霧吹き 500円程度
・ビーカー 500円程度
・時計皿 500円程度
フェノールフタレインは粉末で入手できれば濃いインクから薄いインクまで自在に作ることができますが、入手が難しい場合には溶液タイプでも構いません。薄いようであればシャーレなどに取って室温でしばらく濃縮することで濃くすることができます。
また、フェノールフタレインおよびアンモニアは設備の整った実験室にて取り扱い、
掲載写真,図全てレイユール氏提供
レイユール 薬理凶室のYouTubeチャンネルでは、化学実験をコミカルな動画で紹介する「ガチ実験シリーズ」を不定期更新している。 |
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